「量は質」という考え方ありますが、それは特許に関しては正しくありません。特許の量が特許の質に直接関連するものではないのに、裁判所ではそのような主張が後を絶ちません。そこで、今回はより信頼できる引用データをベースにした特許の質の測り方について説明します。
特許の量と特許の質に関連性なし
特許総数とそれらを集計した際の「質」に関係性はほとんどありません。特に、特許の価値とその数をグラフにすると、ベルカーブ(中心が一番多く、中心から離れるにつれ低くなっていく)ではなく、低い価値のモノが極端に高く、価値の高いものになればなるほど数が低くなるカーブを描きます。
つまり、一定数の特許を見た場合、そのほとんどは価値の低い特許で、数件程度が価値の高い特許という分散になります。ということは、総合的な特許の質というのは、全体に比べて一握りの価値が高い特許があるか、ないか、によって大きく変わってくると言うことです。そのため、ただ単に特許数だけでそのポートフォリオの価値を査定するという手法には問題があるのです。
引用データによる特許の質の測り方
特許総数から質を考えるのは正しくないということはわかりましたが、他にどのような方法があるのでしょうか?文献を見ると様々な評価方法がありますが、その中でも最も一般的で、簡単なのが引用を用いた分析です。
引用データによる特許の質の測り方については今まで様々な文献がありますが、基本的な考え方として、特許が重要なものであれば、より多くの特許の進歩性・新規性の判断に用いられるはず。明細書での開示とおなじようなクレームがなされていれば、その特許の価値は高いということです。
このようなデータを使った特許分析は手作業ではできない膨大な数の特許を評価するときに有効です。例えば、LTE技術などのサンプルが多い分できの場合、1つ1つの特許を人間が手作業で評価していくことは物理的に不可能なので、このようなデータによる分析が有効です。
引用は時間と共に変化
被引用(文献が新しい文献で引用されること)は時間が経過するごとに増えていき、その早さも特許の年によって大きく異なります。そのため、引用データによる特許の質を分析する場合、現在の引用数と今後期待される引用数を時間軸でノーマライズする必要があります。そのため、 ‘citation score’はthe ratio of the actual number of citations received to the number expected given its ageという風に定義されています。このスコアを使うことで個々のと挙をランキングすることができます。
引用数を価値に変換する時の注意点
しかし、引用数がそのまま1対1で価値に変換できるということではありません。例えば、ある特許は別の特許の2倍の引用数があったとしても、別の特許の2倍の価値がるということではありません。
つまり、引用スコアー順にランクした特許の価値を知るためには、そのランキングを価値に変換するための特許価値の分散ラインを求める必要があります。言い換えると、
サンプルにした特許群の平均値と比べた個々の特許の価値というのは、引用スコアーと特許価値の分散に関わる様々な研究結果を掛け合わせることで導くことができます。特許価値の分散に関わる研究結果は、経済学者が様々な技術、国、時間軸ごとにおこなったものがあります。 (a review of the literature on patent-value distributions is provided in “Value Shares of Technologically Complex Products” by J Putnam)
まとめ
このように引用データをベースにした特許の質の測り方はサンプル数が多くても少なくても信頼できるデータを得ることができます。ライセンス交渉や訴訟では、まだ数が正義という印象はありますが、より正確な特許の対価を見極めるには、このような「量は質」という考えではなく、「質」をより客観的に引用データから評価することが大切になってきます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Hieu Luu – Competition Dynamics, Inc – IP valuations(元記事を見る)