商標の譲渡を記録しなかったことで訴訟が却下される

Muertos Roasters LLC v. Luke Schneiderにおいて、カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所は、親会社からの譲渡を反映していないUSPTO記録に基づき、侵害の訴えを退けました。この事件は、所有権の移転を記録することの重要性を示す注意すべきケースです。

ケース:Muertos Roasters LLC v. Luke Schneider

商標譲渡のときにUSPTOへの記録手続きを忘れない

多くの企業経営者にとって、商標登録の記録の維持は見落としがちな事柄です。商標の譲渡は、商標を譲渡する当事者間での譲渡契約で有効になると考えているかもしれません。しかし、この理解は必ずしも正しくはありません。書面による合意は確かに必要ですが、USPTOへの譲渡の記録の提出と証明は、その後の購入者を拘束するだけでなく、一般的に執行措置の抜け穴を防ぐことができます。今回のMuertos Roastersのケースは、まさにこのことを物語っています。

親会社が商標を持っていても、訴訟は適切ではないと判断された

カリフォルニアのコーヒー会社であるMuertos Roasterは、イリノイ州のコーヒーショップであるFire Department Coffee Incとそのオーナーに対し、Fire Department Coffeeがそのコーヒーのマーケティングと販売のために明確なトレードドレスを侵害したとして、商標権侵害訴訟を提起しました。被告側は、原告が係争商標を所有しておらず、裁判所には人的管轄権がないとして、連邦民事訴訟規則12(b)(6)および12(b)(2)に基づき、訴訟の却下を申し立てました。

Fire Department Coffeeの申し立てを認めた際、裁判所は、Muertos Roastersの訴訟は、係争中の商標の所有権に基づいていると指摘しました。しかし、被告が提出したUSPTOの記録によると、商標登録と出願は、実際にはMuertos Roastersの親会社であるCup Half Full Holdings Inc.が所有していることが判明しました。USPTOの記録は公開されており、その正確性は「合理的に疑問の余地がない」ため、カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所はその情報を司法通知し、真実であると認めました。Muertos Roastersは、親会社との関係を説明する宣誓書を提出し、当事者の意思を示す証拠として商標譲渡契約書を提出したにもかかわらず、このような結果になりました。

裁判所は、記録されていない譲渡契約はMuertos Roastersの訴状に添付されておらず、譲渡により商標を所有していることを訴状で述べていないため、司法通知の対象にはならないと判断しました。裁判所は、司法通知の対象となる事柄と矛盾する主張を真実とみなす必要はないため、Muertos Roastersの侵害に関する訴状を棄却しました。Muertos Roastersは今後、所有権の不一致に対処するため、訴状を修正する必要があります。

めんどくさいが問題にならないためにも商標譲渡のレコードは行うべき

他の知財の譲渡と同様に、商標の譲渡を特許庁に記録するための追加ステップを踏むことは、時間がかかると思われるかもしれません。特に、所有構造が複雑で、譲渡された商標のポートフォリオが多い企業では、作業が煩雑になりコストがかかる傾向にあります。

しかし、これらは面倒な作業であると同様に非常に重要なことです。取引において、権利者のチェーンのクリーンな履歴は取引のスピードと当事者の安心感を向上させることができます。また、特にMuertos Roastersのように権利行使の文脈では、適切に記録された譲渡は所有権に確実性をもたらし、当事者は最終的な侵害の主張のメリットに集中することができます。将来的に大きな問題となることを避けるために、実務家や企業経営者は、商標の譲渡の際に、USPTOへの譲渡における権利者の変更の更新手続きを忘れずにやるべきです。

参考文献:Failure to record trademark assignment supports dismissal

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