ここ数ヶ月、ChatGPTに代表される人工知能(AI)と法曹界に関連する意見が絶えませんが、中にはAIがいずれ弁護士を廃業に追い込むことをほのめかす記事もあります。しかし、AIは101条における特許の適格性について正しい判断ができるのでしょうか?
ありふれた訴訟内容であっても係争中の案件については見当違いの見解を示す場合がある
例えば、Interactive Wearables v. Polar Electro et al.を例に上げましょう。
この訴訟は、現在、連邦最高裁判所で係争中です。この事件はありふれた特許適格性(patent eligibility)事件であり、規則12の申し立てに基づく意見で却下され、連邦巡回控訴裁判所で、裁判所が下級審の判断に同意することを記録する以外に、裁判所の判断について何の説明もしない規則36による肯定(Rule 36 affirmance)がなされたものです。
とはいえ、この訴訟はまだ係争中なので、ChatGPTに、最高裁がこの案件を取り扱うことを認めるべきか(grant cert)どうかを尋ねてみました。その回答は、ほぼ事実無根のものでした。2020年に連邦巡回控訴裁が判決を出したのは正しいのですが、それはChatGPTが述べたように、略式裁判の申し立てに関するものでも、非侵害に関連するものではありません。
回答は、法律上の決まり文句(例えば、「裁判所がどの事件を審査することになるかを予測することはよくあること」)でスペースを埋め尽くし、そして、もし最高裁がこの事件を取り扱うことを認めた場合、「特許事件における侵害の証明の法的基準について、裁判所が明確にする機会を提供するだろう」と述べて回答を終了しました。
しかし、このような回答は間違っています。特許適格性に関する言及があるべきなのに、そのようなものは何もありませんでした。
訴訟履歴があるクレームに関する特許適格性に関しても正確な答えは出てこなかった
次に、ChatGPTに米国特許第8,401,710号が35 U.S.C. Section 101に基づく特許適格性を有するかどうかを尋ねました。この特許を選んだのは、’710特許のクレーム12が、よく引用される特許適格性判例であるElectric Power v. Alstomの代表クレームであったからです。
最初の問題と同様に、ChatGPTは事実と想像を組み合わせています。例えば、ChatGPTは、’710特許が2013年3月19日に付与されたことは正しいが、’710特許が 「ネットワーク化されたコンピュータシステムを使用して、飛行機の座席やホテルの部屋などのリソースの予約を管理する方法」 に向けられていると述べるにとどまっていました。これもまた間違っています。また、この特許についてすでに判決が下っていることも認識してはいません。
まとめ
ChatGPTが法律実務に大きな影響を与えないとは言いません。しかし、これは注意喚起の言葉でもあります。AIの応答は印象的に見えるかもしれませんが、事実ではないもの、正確ではないものも混じっている可能性があります。なので、ジェネレーティブAIのアウトプットには注意が必要です。
参考記事:Artificial Intelligence (AI) Weighs in on Section 101 Patent Eligibility