特許訴訟の場合、通常、侵害の判定(つまり、特許クレームが有効であり、侵害されているという判定)の後、特許権者への損害賠償金額が決められます。実際の金額は提出される証拠にもより、損失利益(lost profits)の回収も可能ですが、そのような損失利益がない(自社で関連商品を販売していないなどの)場合、侵害者による発明使用に対する適切なロイアルティ(reasonable royalty)を得ることができます35 U.S.C. Section 284

難しい適切なロイアルティレート算定

通常、適切なロイアルティ(reasonable royalty)は、侵害品の売上にロイアルティレートを掛けて計算されます。ここで使用されるロイアルティレートは、侵害者にとって、特許で守られている特徴の価値を表すものでなければいけません。しかし、今日のような技術革新が進んでいる世の中で、特許で守られているものが製品そのものということは珍しく、ほとんどの場合、売られている製品には特許で守られている特徴と特許で守られていない特徴が混在しています。このようなことから、適切なロイアルティレートを決めるのはとても難しい環境下にあります。

例外である“entire market value”ルール

また、通常、ロイアルティレートは、侵害者にとって、特許で守られている特徴の価値を表すものでなければいけませんが、例外があり、侵害された特徴が顧客の需要の基盤になっている場合、製品全体の価値(“entire market value”)から賠償金を得ることができます。“entire market value”ルールが適用されることは、特許権者にとってとても有利なことで、そのために、激しく争われる点でもあり、近年の CAFC の判例では、“entire market value”の適用に制限をかける傾向があります。

CAFCにおけるレビュー

特に“entire market value” ルールの適用によって、賠償金額が高額になるケース(~$100M)に関してCAFC は“entire market value” ルールの適用に制限を掛ける傾向があります。このような高額賠償金が、地裁の陪審員によって決められた場合、 CAFC は損害賠償を無効にし、地裁に差し戻し、1)ルール適用を是正する証拠を更に入手することや、2)“entire market value”ではなく、分配ベース(apportionment basis)で再計算するように求めることが過去に何度もありました。今回取り上げたPower Integrations, Inc. v. Fairchild Semiconductor International, Inc.もCAFCが“entire market value”ルールの適用に制限をかけた一例です。

判例

Power Integrations, Inc. v. Fairchild Semiconductor International, Inc.という長年続いている競合同士の特許訴訟は、2009年に始まり、2014年に公判が開かれ、$105Mの支払い命令があった後、被告のFairchildが裁判のやり直し(new trial)を勝ち取り、1回振り出しに戻ってから、やり直し公判では$140Mの支払いが命じられ、CAFCに上訴されました。この上訴で、被告のFairchildは、“Entire Market Value” Ruleが不適切に適用されたとして、賠償金額に対して再考するように求めました。侵害そのもにに対しては認められましたが、CAFCは、地裁における“Entire Market Value” ルールの適用が不適切だとしました。

CAFCは、特許権者であるPower Integrationsは、特許で守られている特性のみが、顧客が被告人の侵害品を買う要因であったということを示していないとしました。CAFCは特に、地裁判事が、侵害品の他の特徴も大切であり、顧客もそのような他の特徴を評価していたという発言に注目。“Entire Market Value” ルールの適用の是非に関する証明責任は特許権者にあるにもかかわらず、特許権者のPower Integrationsは他の特徴が顧客の需要に影響を与えていないということを証明していなかったため、“entire market value” ルールの適用は不適切だとし、地裁に差し戻し、適切な賠償金額に関して審議を進めるよう命じました。

まとめ

特許権者にとって、この判決は、損害賠償の理論を十分な証拠に基づいて主張していく重要性を示しています。特に、特許権者として、”Entire Market Value” ルールを基にした損害賠償を求める場合、顧客の需要が特許で守られた特徴のみに依存していることを示す証拠を提出する必要があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Guy Yonay. Pearl Cohen Zedek Latzer Baratz (元記事を見る

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