特許法において、出願人が PTAB における判決に不服がある場合、2つのオプションがあります。1つ目のオプションは、35 U.S.C. § 141に基づいて、 CAFC に上訴すること。2つ目は、 35 U.S.C. § 145に基づいて、地裁で特許庁長官を相手に訴訟を起こすことです。2つ目のオプションを選んだ場合、出願人が勝訴したとしても、費用はすべて出願人が払うことが35 U.S.C. § 145に明記されています。(“[a]ll the expenses of the proceedings shall be paid by the applicant”)。この条文により、特許庁は旅費、裁判所のレポータ費用、エキスパート費用などのさまざまな費用を出願人に請求してきました。しかし、今回、この「費用」に弁護士費用(“attorney fee”)が含まれるのかが問題になりました。
経緯
今回、Nantkwestというケースは、Nantkwestが35 U.S.C. § 145において起こした地裁訴訟の弁護士費用を特許庁が出願人であるNantkwestに請求しようとしたことから始まり、 CAFC のすべての判事が参加する En Banc によって判決が下されました。
多数派
Stoll判事が多数派の判決文を書き、Newman, Lourie, Moore, O’Malley, Wallach と Taranto判事が加わりました。多数派は、§ 145の「費用」(“expenses”)には弁護士費用(attorneys’ fees)は含まれないと解釈しました。その理由としては2つあり、1つ目は、アメリカのルールでは当事者がそれぞれの弁護士費用を負担することが通常で、相手に弁護士費用の支払いをさせるような例外は、明確な言葉で(“specific and explicit” language)条文にかかれていなければいけないこと、2つ目は、問題になっている§ 145の条文にはそのような弁護士費用の請求を許可するような明確な言葉は記載されていなかった。他の特許法の条文、例えば35 U.S.C. § 285では例外で弁護士費用の請求を認めていますが、そのような明確な言葉は § 145の条文にはなく、§ 145の条文における「費用」に弁護士費用が含まれるかは、良くても曖昧にとどまるとして、弁護士費用の請求に対する「明確な言葉」は書かれていないとしました。
少数派
少数派のProst、Dyk, Reyna, と Hughesは弁護士費用も § 145の「費用」に含まれると解釈しました。その理由は、条文において、「すべての費用」( “all” expenses)と書かれており、費用には通常人経費も含まれると考えたからです。特許庁は、庁内の弁護士を使っていたので、事務所により請求される弁護士費用(attorney fee)ではなく、特許庁の人経費という費用(expense)として考えることが適切だとしました。また、多数派の§ 145と§ 285の比較も、§ 285は特許訴訟におけるもので、全く違う状況に適用される条文同士を比較したことを避難しました。
コメント
判決自体の重要性というよりも、この判決が En Banc で行われたという理由でこの判決を取り上げました。 En Banc は CAFC が重要だと思うものに対して行われます。ここでのポイントは、多数派がどのように分析を行ったか(Common lawのAmerican ruleの適用と他の条文との比較)という分析方法や論理を知ることが大切だと思います。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Christopher E. Loh and Stephen Yam. Fitzpatrick, Cella, Harper & Scinto(元記事を見る)