特許番号表示(Patent marking)は大切で、表示を怠ると特許訴訟の際の損害賠償が減ってしまう可能性がある。AIAまでは物理的な特許番号表示しかできなかったが、特許法の改正で、バーチャル特許番号を表示できるようになった。今回はその基本を説明する。
特許番号表示の重要性
AIA後、別名「表示規則」(“marking statute”)とも呼ばれいる35 U.S.C. § 287(a)において、バーチャル特許番号の表示が可能になった。 そもそも表示の目的は、対象製品が特許で守られていることを公の場に示すということで、その表示を怠ると、特許侵害があった場合でも、賠償金は、侵害者に侵害の通知を直接行った時から計算される。つまり、侵害者への侵害の通知以前に特許侵害行為があっても、その期間の損害は回収できない。
AIA以前
AIA以前は、対象の製品(製品が小さすぎる場合はパッケージなど)に“Pat. 1,222,333” や “Patent 2,333,444”など特許番号を表示しなければいけなかった。そのような場合、特許が満了した際の削除、新しい特許を得た際の番号の追加などを物理的にしなければならず、負担が大きかった。
AIA以降
しかし、バーチャル特許番号表示(Virtual patent marking)では、対象製品(製品が小さすぎる場合はパッケージなど)に“pat.” または “patent”と関連する特許番号を示すウェブサイトのアドレスを提示するだけでよくなった。(例:“Patent: www.ourbettergolfclubpatents.com” )ウェブサイトで表示できることで、製品の文字を印刷できる物理的な場所にかぎらず、その商品に関わる全ての特許を提示することができ、その情報を比較的簡単に管理できるようになった。
表示が必要なもの
もし特許が方法クレームのみの場合、表示は必要ない。しかし、表示する場合、“Made Under US Pat. No. 1,234,567” や “For Use under U.S. Pat. No. 1,234,567”などの文言を使用する必要がある。意匠(Design Patents)も同じような表示が必要。ソフトウェア特許の場合、表示がスタートアップやローディングスクリーンなどに表示されるだけでは、適切な表示ではないと判断されてしまう可能性があるので、注意が必要。
特許表示の条件
表示条件として、以下を満たす必要がある:
(i) “patent” または、 “pat.” と特許番号、または、特許番号を示しているウェブサイトのアドレスが書かれていること、と
(ii) 対象特許に関心がある人に読みやすく、情報が入手しやすいこと。
表示の場所は、特許権者の任意で決められる。表示が十分だったかは、対象製品が特許で守られていることを公の場に表すための表示が誠意的に行われたか(good faith notice)が判断基準になる。また、表示規則に従うためには、対象特許に関わる製品のほぼ全てに表示が行われている必要がある。また、対象特許をライセンスしている場合、ライセンシーに対象特許を表示する義務を負わせなければいけない。また、一度表示を始めたら、表示は一定で継続していなければ、見なし通知 (constructive notice) としてみなされない可能性がある。一部の製品にしか表示されていないケースがあり、そのケースでは見なし通知が認められなかったので、対象製品のすべてに特許表示を行うべきである。
特許と製品の関連性
表示されている特許と対象製品の間には、関連性(nexus)が必要。特許表示 (Patent marking) は公に対象製品が特許で守られていることを示す役割があるので、この関連性は重要。しかし、ソフトウェアの場合、この関連性を示すのが難しい場合がある。ソフトウェアにおいて特許表示だけでは関連性を示しにくい場合、関連性を示す簡単な説明を加えるのもよい。通常、特許と製品の関連性(patent marking nexus )は、以下のような表示で満たすことができる “patented article” is covered by “one or more of the following patents。” しかし、表示が“patented technology” のような不明瞭な表現だと特許と製品の関連性が示されない可能性があるので注意。
バーチャル特許番号表示で気をつけたいこと
インターネットを媒介にするバーチャル特許番号表示では、アクセスするユーザーのプライバシーが問題になっている。例えば、特定のソフトウェアにログインしなくてもバーチャル特許番号表示関連情報にアクセスできるようになっていなければならなかったり、サイトにアクセスするユーザーの追跡 (tracking) を避けること(例えばcookiesを有効にしなくても情報が見られるようにする)など配慮が必要になってくる。バーチャル特許番号表示に関する情報は、簡単に誰でも見れて、見ても追跡されないことをサイトに示しておくことで、このようなバーチャル特許番号表示特有の問題を回避できる。
最後に
バーチャル特許番号表示は比較的新しい制度なので、まだはっきりしないところがある。上記に示したような問題やまだ認識されていない問題が出て来る可能性があるので、バーチャル特許番号表示の利便性とそのリスクを物理的な特許番号表示と比較して、適している方法を採用するのが望ましい。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Daniel G. Vivarelli, Christopher J. Nichols and Suzanne P. Hosseini. Hunton & Williams LLP(元記事を見る)