自律走行車(autonomous vehicle (AV) )市場が急速に成長する中、AVに関わる特許数も急上昇しています。今後は、現在のスマートフォンのような、特許で保護された様々な技術が混在する市場になっていくことが予想されます。
早ければ来年にも完全自律走行が可能なAVが登場することが期待されていますが、AVを使えるレベルに持ってくることは技術的にとても難しいことです。また、様々な距離認識センサー、位置決定システム、イメージセンサーなどが必要で、そこから得られた情報を分析するコンピュータ、そこから得られた結果を車の各部分に伝え、動作を行う仕組みなどそれぞれの部品やプログラムが複雑に絡み合って始めて成り立つものです。
AVはその複雑さや幅広い技術的な需要から、大手自動車メーカーはもちろん、テクノロジー企業や金融企業などさまざまな業種の会社が関わる市場です。そのため、AVに関わる特許も多く出願されています。
現在、 “autonomous vehicle”という語彙を含む特許はアメリカだけでも4,300件以上あります。その中にはセンサー類の向上を目的にしたものから、物体を関知したり、AVの運行を行うソフト関するもの、変わったところだと小売りに特化したものもあります。
このようにAV関連の特許の規模とその成長率は目を見張るものがありますが、ただ数を追い求めてもマーケットシェアの確保、ライセンス契約、訴訟での有利性を保てるものではありません。特許で有利になるには、競合他社に影響を与える特許でなければなりません。競合他社に影響がない特許を持っていても、その特許にはほぼ価値がないと言ってもいいでしょう。
価値の高い特許は偶然できるものではなく、しっかりとした戦略や考えの上に作り出されるものです。
AV業界の今後は、現在のスマートフォン業界のように特許が重要な役割を担うことが予想されます。その時のためにもAV業界に携わる企業は戦略的に、かつ積極的にAV関連の特許を出願していくことが大切です。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Joseph M. Schaffner and Darren M. Jiron. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP (元記事を見る)