特許訴訟が悪用された場合、弁護士費用を肩代わりさせやすくなった

米国最高裁は、2014 年、Highmark Inc. v. Allcare Health Management Systems, Inc., 134 S. Ct. 174s4 (2014) Octane Fitness, LLC v. ICON Health & Fitness, Inc., 134 S. Ct. 1749 (2014) に おいて、「例外的な事件」(exceptional cases)に対して、裁判所か 敗訴した側に勝訴 した側の弁護士費用を負担することを命じることができると判決した。

Attorney fee-shifting awards (または単に Attorney fees とも呼ばれることがある) — 米国特許法に明記されている弁護士費用賠償制度。35 U.S.C.§285

特に Octane Fitness 事件で、最高裁は「例外的な事件」(exceptional cases) は当事者同 士の立場の強さ(the substantive strength of a party’s litigating position)、または、訴訟に おける理不尽な振る舞い (unreasonable manner in which the case was litigated)などが他 の事件から突出しているもので、地裁は全体的な状況 (the totality of the circumstances) を考慮し、地裁の判事の裁量で判決するべきとした。

Highmark 事件では、Octane Fitness 事件における判決を受けて、更に、United States Court of Appeals for the Federal Circuit(略して CAFC、アメリカ連邦巡回区控訴裁判所) における弁護士費用賠償制度に関わる地裁の判断は、裁量権の乱用が行われたか否かの 基準(abuse-of-discretion standard)が用いられるべきとした。

Abuse-of-discretion standard (自由裁量の濫用)— CAFC が地裁の判決を見直すと きの基準の1つ。問題になっている判決の際に判事が裁量権を乱用したかを見直 すため、地裁の判決に同意する場合がほとんど。

このように2つの事件から、特許訴訟が悪用された場合、弁護士費用の賠償が認められやすく、また、控訴されても棄却される可能性が低くなったので、今後のパテント・トロールの動向に大きな影響を与えることが予測される。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Andrew W. Williams, Ph.D. McDonnell Boehnen Hulbert & Berghoff LLP(元記事を見る

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