Appleは自社の商標を守ることに非常に積極的です。ある監視機関の最新のレポートによると、Appleは自社のロゴに近すぎると考える第三者の商標に対して、過去2年間の間に215件の異議申し立てを行っていたことがわかりました。ある専門家は、このAppleの戦術を「いじめ」と表現していますが、実際はどのような状況なのでしょうか?
レポートで明らかになった異常な数のAppleによる商標異議申し立て件数
非営利の監視機関であるTech Transparency Projectがまとめたレポートによると、2019年から昨年にかけて、Appleは、自社のロゴ、名称、製品タイトルを守るために215件の商標異議申し立てを行ったといいます。これは、Microsoft, Amazon, Facebook や Googleが同時期に行った商標異議申し立ての推定件数136件よりも遥かに多いと、同団体は述べています。
実際にレポートを見てみると、Appleとは全く関係のないグリーンエッグカードやノートを取り扱うPaperappleという小さな会社に283 ページにも及ぶ異議告知書がAppleの法律事務所の一つから届いたり、教育系のロゴでリンゴ(アメリカではリンゴは頭の良さを連想させるものなので、リンゴの形に似せた教育系のロゴが多いです)を模様したものに異議告知書をしたり、ターゲットになるところは、比較的小規模でAppleのメインの業種であるテクノロジーとは程遠いものがほとんどです。
Appleの強固な姿勢と戸惑う人たち
Appleの広報担当者は、同社が商標を守ることは法律で義務づけられており、「過度に広範であったり、顧客を混乱させる可能性がある出願を見た場合、我々の最初のステップは常に連絡を取り、これらを迅速かつ友好的に解決しようとしている」と述べ、法的措置は「常に」最後の手段であると付け加えていました。
しかし、レポートによると、実際にAppleから異議申し立てを受けた人や会社の多くは、彼らの商標出願が軽薄であったか、単に間違っていたと思った、あるいは、法廷闘争をする余裕がなかったため、申し立てに対抗できなかったというケースも少なからずあったようです。Appleに異議申し立てされたところの多くはとても小さい会社や非営利団体、個人だったようなので、このAppleによる申し立てをきっかけに商標出願を諦めるという結果になるところがほとんどだったようです。
場合によっては、Appleに異議申し立てに対抗するところもあったようですが、対応コストは少なく見積もっても1万ドルはかかるので、一般的な商標の出願費用である1000ドルから数千ドルという費用と比べると、出願人にとってとても大きな負担になります。
このように中小企業や個人をAppleがターゲットにしている状況を見て、少なくともある法学教授は、アップルの戦術に感心しておらず、「いじめ」と表現している人もいるみたいです。
適切な取り締まりはどのレベルなのか?
Appleのようにブランド力が強い企業の場合、「徹底的に」商標などの取り締まりを行う傾向があります。しかし、どのレベルが適切なのでしょうか?
商標権者にとって、自社の商標を守ることは義務です。商標を持っていたとしても、取り締まりを怠っていては、持っている商標の真価は発揮できません。しかし、今回のAppleのように見方によっては「行き過ぎ」と思われるような活動をすると、せっかく長年築いてきたブランドイメージを損なうような結果にもなりかねません。
今回のレポートへのアクセスはこちらから。今回紹介しきれなかった実例もたくさん載っています。あと、Excelでまとめられた全215件の商標異議申し立てリストもあるので、興味があれば見てみてください。
参考記事:Report: Apple uses ‘bullying tactics’ to defend its trademark