1. はじめに
先月、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、Amarin Pharma, Inc. v. Hikma Pharmaceuticals USA Inc.事件において、製薬業界に大きな影響を与えかねない判決を下しました。この判決は、ジェネリック医薬品メーカーがスキニーラベル(Skinny Label)を使用する際の新たなリスクを浮き彫りにし、特許侵害の範囲がより広く解釈される可能性を示しました。
事件の中心となったのは、アマリン社の高脂血症治療薬Vascepaとヒクマ社のジェネリック版です。ヒクマ社は特許で保護された適応症を除外したスキニーラベルを使用しましたが、アマリン社はヒクマ社の行動が誘引侵害(Induced Infringement)に当たると主張しました。
審議の結果、CAFCの判決は、製品ラベルだけでなく企業の全てのコミュニケーションを考慮に入れるべきだとし、本件における誘引侵害の可能性を認め、誘引侵害の判断基準を拡大すると解釈できる判決を下しました。この判例は、ジェネリック医薬品メーカーとブランド医薬品企業の双方に新たな課題と機会をもたらし、ハッチ・ワックスマン法(Hatch-Waxman Act)の解釈に新たな視点を提供するものです。
本稿では、この重要な判決の背景、内容、そして製薬業界への影響を詳しく分析し、今後の展望について考察します。
2. 事件の背景
2.1. ハッチ・ワックスマン法とスキニーラベル
1984年に制定されたハッチ・ワックスマン法(正式名称:医薬品の価格競争と特許期間の回復に関する法律)(Hatch-Waxman Act, formally known as the Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act)は、ジェネリック医薬品の迅速な市場参入を促進しつつ、新薬開発のインセンティブを維持するという難しいバランスを取ることを目的としています。この法律の重要な特徴の一つが、「スキニーラベル」の概念です。
スキニーラベル(Skinny Label)とは、ジェネリック医薬品メーカーが、特許で保護された用途を除外して製品ラベルを作成することを認める仕組みです。これにより、ジェネリック医薬品メーカーは、特許が切れていない用途を避けつつ、特許が切れた用途については市場に参入することができるのです。この仕組みは、21 U.S.C. § 355(j)(2)(A)(viii)に基づいており、「第viii項カーブアウト」(Section viii Carve-Out)とも呼ばれています。
2.2. アマリンのVascepaとヒクマのジェネリック版
本件の主役となるのは、アマリン・ファーマ社(Amarin Pharma, Inc.)が開発したVascepa®という薬剤です。Vascepaの有効成分はイコサペント酸エチル(icosapent ethyl)で、これは魚油に含まれるオメガ3脂肪酸のエチルエステル体です。
Vascepaは当初、2012年に重度の高トリグリセリド血症(severe hypertriglyceridemia、SH)の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けました。その後、2019年に心血管リスク低減(cardiovascular risk reduction、CV)という新たな適応でも承認を得ています。
一方、ヒクマ・ファーマシューティカルズ社(Hikma Pharmaceuticals USA Inc.)は、Vascepaのジェネリック版を開発。ただし、ヒクマはスキニーラベルを採用し、心血管リスク低減(CV)の適応を除外して重度の高トリグリセリド血症(SH)の適応のみをラベルに記載しました。
2.3. 過去の訴訟とFDA承認
この事件に至るまでには、複雑な訴訟の歴史があります。2016年、ヒクマがジェネリック版の承認申請(Abbreviated New Drug Application、ANDA)を行った際、アマリンはネバダ州連邦地方裁判所で特許侵害訴訟を起こしました。この訴訟では、SH適応に関するアマリンの特許が無効とされ、ヒクマの勝訴に終わっています。
その後、2020年5月21日、FDAはヒクマのANDAを承認。ヒクマはスキニーラベルを用いて、SH適応のみでジェネリック版の販売を開始しました。
しかし、アマリンは諦めませんでした。2020年11月、今度はCV適応に関する特許(米国特許第9,700,537号および第10,568,861号)の誘引侵害(Induced Infringement)を主張して、デラウェア州連邦地方裁判所に新たな訴訟を提起したのです。
誘引侵害(Induced Infringement)とは、特許法における間接侵害の一形態で、他者による特許の直接侵害を意図的に引き起こすまたは奨励する行為を指します。米国特許法271条(b)に規定されており、直接侵害の存在、被告の侵害を引き起こす意図、および特許の存在に関する知識が主要な要素となります。
この複雑な経緯を経て、事件は最終的にCAFCの判断を仰ぐこととなりました。次章では、この訴訟の詳細と、CAFCがどのような判断を下したのかを見ていきましょう。
3. Amarin Pharma, Inc. v. Hikma Pharmaceuticals USA Inc.事件
3.1. アマリンの主張
アマリン社の主張は、一見すると単純明快です。彼らは、ヒクマ社が意図的に医師たちにVascepaのジェネリック版を特許で保護されたCV適応に使用するよう促している、と訴えたのです。しかし、その主張の根拠は複雑で多岐にわたります。
まず、アマリンはヒクマのラベルに注目しました。確かに、ヒクマのラベルにはCV適応の明示的な記載はありません。しかし、アマリンは、ラベルの他の部分、特に臨床試験の記述や副作用の警告が、実質的にCV適応の使用を示唆していると主張しました。
さらに、アマリンはCV使用制限(CV Limitation of Use)の削除に関する問題を提起しました。アマリンは、FDAが自社にCV使用制限の削除を認めたからといって、ヒクマにも同様の削除が認められるわけではないと主張しました。アマリンによれば、ヒクマがCV適応を意図的に除外したスキニーラベルを採用しているにもかかわらず、CV使用制限を削除したことは、実質的にCV適応の使用を促していると解釈できるというのです。
加えて、アマリンはヒクマのプレスリリースと販促資料を問題視しました。ヒクマが自社製品を「Vascepaのジェネリック版」と呼び、Vascepaの総売上高(そのうちの75%以上がCV適応によるもの)に言及していたことが、特に問題視されました。
アマリンの主張の核心は、これらの要素—ラベルの内容、CV使用制限の削除、プレスリリースや販促資料の表現—を総合的に見ると、ヒクマが意図的に医師たちに特許で保護されたCV適応にジェネリック版を使用するよう誘導している、というものでした。
3.2. 地方裁判所の判決
デラウェア州連邦地方裁判所は、アマリンの主張を退けました。裁判所の判断は、アマリンの主張を二つの側面に分けて検討するというものでした。
まず、ヒクマのラベルについて、裁判所はCV適応の使用を示唆するものではないと判断しました。心血管疾患患者への副作用の警告は、CV適応の使用を奨励するものではなく、CV使用制限(CV Limitation of Use)の削除も、製品がCV適応に有効であることを示すものではないと結論づけました。
次に、ヒクマの公開声明について、裁判所はこれらが誘引の意図を示す可能性はあるものの、実際の「誘引行為」の証拠にはならないと判断しました。ヒクマのウェブサイトが製品を「高トリグリセリド血症」(Hypertriglyceridemia)という幅広いカテゴリーで宣伝していたことについても、CV適応の使用を奨励するレベルには達していないと判断しました。
結果として、地方裁判所はヒクマの訴え却下の申し立てを認め、アマリンの訴えは、法的に十分な誘引侵害の主張を構成していないと判断しました。アマリンはこの地裁での判決を不服として、CAFCに控訴します。
4. CAFCの判決
CAFCは、地裁とは異なる視点でこの事件を審議しました。もう少し詳しく言うと、CAFCは、この事件を従来のハッチ・ワックスマン法下での訴訟や、単なるラベル解釈の問題として扱うのではなく、より広範な誘引侵害の問題として捉え直したのです。
4.1. 審理基準
CAFCは、まず、訴え却下の申し立て(Motion to Dismiss)に対する判断という本件の性質を重視しました。
訴訟手続において、訴え却下の申し立ては証拠に基づいて事実を認定する段階ではなく、訴訟を続行するに足る主張がなされているかを判断する段階なので、原告の主張を真実として扱い、それらから導かれる合理的な推論をすべて原告に有利に解釈しなければなりません。つまり、アマリンの主張が「もっともらしい」(plausible)と言えるかどうかが、判断の基準である点を強調しました。
4.2. ヒクマのラベルの分析
ヒクマのラベルについて、CAFCは地方裁判所とは異なる見方をしました。確かに、ラベルにはCV適応の明示的な記載はありません。しかし、CAFCは他の要素と組み合わせて考えると、ラベルの一部の記述が問題となる可能性があると判断しました。
特に注目されたのは、臨床試験のセクションです。ここには、アマリンの特許クレームに記載されているのと同じ心血管イベント歴と脂質レベルを持つスタチン治療患者の記述がありました。また、SH適応(トリグリセリドレベル≥500 mg/dL)の患者群が、CV適応(トリグリセリドレベル≥150 mg/dL)の患者群と重複していることも指摘されました。
さらに、CAFCは、CV使用制限(CV Limitation of Use)の削除にも注目しました。CV使用制限は通常、特定の用途に対する製品の有効性や安全性が十分に確立されていない場合にラベルに記載されるものです。アマリンがFDAからCV使用制限の削除を認められたことは、CV適応に関する十分なデータが得られたことを意味します。しかし、アマリンは、FDAが自社にCV使用制限の削除を認めたからといって、ヒクマにも同様の削除が認められるわけではないと主張しました。この主張の根拠は、ヒクマがスキニーラベルを採用し、意図的にCV適応を除外しているという点にあります。この点について、CAFCは少なくとも訴え却下の段階では、アマリンの主張に一定の妥当性があると判断したのです。
4.3. ヒクマの公開声明とマーケティング資料の考慮
CAFCが特に重視したのが、ヒクマの公開声明とマーケティング資料でした。ヒクマのプレスリリースでは、自社製品が「Vascepaのジェネリック版」や「ジェネリックVascepa」と呼ばれていました。また、Vascepaが「一部」SH適応に使用されると述べつつ、Vascepaの総売上高(その大部分がCV適応によるもの)に言及していた点も注目されました。
CAFCは、これらの声明が医師に対して、ヒクマの製品をVascepaと同じように、つまりSH適応だけでなくCV適応にも使用するよう促している可能性があると判断しました。特に、売上高への言及は、ヒクマがCV適応の市場を狙っているという印象を与える可能性があるとされました。
また、ヒクマのウェブサイトが自社製品を「高トリグリセリド血症」という幅広いカテゴリーで宣伝していたことも、非侵害用途と侵害用途の両方を含む可能性があるとして、考慮の対象となりました。
4.4. 誘引侵害の主張の妥当性
これらの要素を総合的に考慮した結果、CAFCはアマリンの誘引侵害の主張が少なくとも「もっともらしい」(plausible)レベルに達していると判断しました。つまり、ヒクマのラベル、公開声明、マーケティング資料を全体として見た場合、ヒクマが医師にCV適応での使用を奨励している可能性があるという主張には、一定の妥当性があるとされたのです。
CAFCは、この段階ではアマリンの主張の真偽を判断するのではなく、訴訟を続行するに足る主張がなされているかを評価しているに過ぎないことを強調しました。そのうえで、アマリンの主張は少なくともこの基準を満たしているとして、地方裁判所の判決を覆し、訴えを却下した決定を取り消しました。
この判決により、事件は地方裁判所に差し戻され、本格的な証拠開示と事実審理のプロセスに入ることになります。
5. 主要な教訓と影響
5.1. ジェネリック医薬品のコミュニケーションにおける明確性と一貫性の重要性
今回のCAFCの判決は、ジェネリック医薬品メーカーに対して重要なメッセージを発しています。それは、製品に関するすべてのコミュニケーションにおいて、明確性と一貫性を保つことの重要性です。
ラベルだけでなく、プレスリリース、ウェブサイト、そしてマーケティング資料のすべてが、誘引侵害の主張の根拠となり得ることが明らかになりました。「Vascepaのジェネリック版」という一見無害な表現でさえ、文脈次第では問題となる可能性があるのです。
ジェネリック医薬品メーカーは今後、自社製品の承認された適応症を明確に伝え、特許で保護された適応症との違いを強調する必要があるでしょう。また、ブランド医薬品の売上高に言及する際は、その内訳を明確にし、自社製品が対象としない適応症からの売上を除外することも考慮すべきです。
要するに、ジェネリック医薬品メーカーは、あらゆるコミュニケーションチャネルを通じて一貫したメッセージを発信し、誤解を招く可能性のある表現を避けることが求められるのです。
5.2. スキニーラベルを使用するジェネリック製造業者のリスク
この判決は、スキニーラベルの使用に関する新たなリスクを浮き彫りにしました。従来、スキニーラベルは特許侵害を回避するための有効な手段と考えられてきましたが、今回の判決はその前提に疑問を投げかけています。
ジェネリック医薬品メーカーは今後、ラベルの記載内容だけでなく、製品に関するあらゆる公的なコミュニケーションが誘引侵害の証拠として使われる可能性を考慮しなければなりません。特に、ブランド医薬品の複数の適応症のうち一部のみを対象とする場合、その区別を明確に示す必要があります。
さらに、市場規模や売上予測に言及する際にも細心の注意が必要です。特許で保護された適応症を含む数字を引用することは、意図せずしてその適応症の使用を促しているという主張につながる可能性があるからです。
結果として、スキニーラベルを使用するジェネリック医薬品メーカーは、より慎重なコミュニケーション戦略を策定し、法務部門との緊密な連携のもとで情報発信を行う必要があるでしょう。
5.3. ブランド医薬品企業にとっての機会
一方、この判決はブランド医薬品企業にとって新たな機会を提供しています。CAFCの判断は、ジェネリック医薬品メーカーの行動を精査し、誘引侵害の可能性を主張するための、より広い基盤を提供しているのです。
ブランド医薬品企業は今後、競合するジェネリック医薬品のラベルだけでなく、そのメーカーのすべての公的なコミュニケーションを注意深く監視することが重要になるでしょう。プレスリリース、ウェブサイト、投資家向け資料、さらには業界会議でのプレゼンテーションなど、あらゆる情報源が潜在的な証拠となり得ます。
また、この判決は、ブランド医薬品企業が特許戦略を再考する機会にもなります。複数の適応症を持つ医薬品の場合、各適応症に対して強力な特許ポートフォリオを構築することの重要性が、より一層高まったと言えるでしょう。
さらに、ブランド医薬品企業は、自社製品の適応症やその市場規模について、より詳細かつ明確な情報を公開することで、ジェネリック医薬品メーカーの曖昧な表現を際立たせる戦略を取ることもできるかもしれません。
このように、Amarin v. Hikma事件の判決は、ジェネリック医薬品メーカーに新たな課題を突きつける一方で、ブランド医薬品企業には戦略的な機会を提供しているのです。両者とも、この判決の影響を慎重に分析し、それぞれの戦略を見直す必要があるでしょう。
6. 法的分析と今後の展望
6.1. 過去の判例との区別
Amarin v. Hikma事件の判決は、過去の関連判例と比較すると、いくつかの重要な点で異なっています。
まず、この事件は従来のハッチ・ワックスマン訴訟とは異なり、すでに市場に出ている製品に関するものです。そのため、CAFCは仮想的な将来の侵害ではなく、実際の市場での行動を評価することができました。
また、GlaxoSmithKline LLC v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc.事件(2021年)と比較すると、Amarin事件ではラベル自体には明示的な侵害の指示がありませんでした。それにもかかわらず、CAFCはラベル以外の要素も含めて総合的に判断することで、誘引侵害の可能性を認めました。
さらに、Takeda Pharmaceuticals U.S.A., Inc. v. West-Ward Pharmaceutical Corp.事件(2015年)では、ラベルに記載された情報が「単に侵害の可能性のある使用法を記述しているに過ぎない」場合、それだけでは誘引侵害とはならないとされました。しかし、Amarin事件では、ラベルの情報に加えて企業の公開声明やマーケティング資料も考慮に入れることで、より広い文脈での評価を行っています。
これらの違いは、誘引侵害の判断基準がより柔軟になり、企業の行動をより広く評価する傾向が強まっていることを示唆しています。
6.2. ハッチ・ワックスマン法の目的のバランス
ハッチ・ワックスマン法は、イノベーションの促進とジェネリック医薬品の迅速な市場参入という、時に相反する2つの目的のバランスを取ることを目指しています。Amarin v. Hikma事件の判決は、このバランスに新たな視点を提供しています。
一方で、この判決はブランド医薬品企業に有利に働く可能性があります。特許で保護された適応症の使用を間接的に促進する行為に対して、より広い範囲で法的措置を取ることができるようになったからです。これは、イノベーションへの投資を保護し、促進するという法の目的に沿うものと言えるでしょう。
他方、この判決はジェネリック医薬品メーカーにとっては新たな障壁となる可能性があります。スキニーラベルの使用だけでは特許侵害のリスクを完全に回避できない可能性が出てきたからです。これは、ジェネリック医薬品の迅速な市場参入を促進するという法の目的とは、一見矛盾するように見えるかもしれません。
しかし、より深く考えると、この判決は両者のバランスを取るための新たな枠組みを提供しているとも解釈できます。ジェネリック医薬品メーカーに対して、より明確で一貫したコミュニケーションを求めることで、市場の透明性が高まり、結果的に公正な競争が促進される可能性があるのです。
今後、裁判所や規制当局は、この判決を踏まえてハッチ・ワックスマン法の解釈をさらに発展させていく必要があるでしょう。イノベーションの保護とジェネリック医薬品の普及のバランスを取りつつ、患者の利益を最大化するという難しい課題に取り組んでいくことになります。
6.3. 誘引侵害の法理における潜在的な発展
Amarin v. Hikma事件の判決は、誘引侵害(Induced Infringement)の法理に関して重要な示唆を与えています。特に注目すべきは、誘引侵害の判断において、企業のコミュニケーション全体を総合的に評価する姿勢が強まっている点です。
従来、誘引侵害の判断では製品のラベルが中心的な役割を果たしてきました。しかし、この判決は、ラベル以外の要素—プレスリリース、ウェブサイト、マーケティング資料など—も重要な証拠となり得ることを明確に示しました。これは、デジタル時代における企業コミュニケーションの多様化を反映した、より現実的なアプローチと言えるでしょう。
また、この判決は「積極的な誘引」(Active Inducement)の概念をより広く解釈する可能性を示唆しています。直接的な指示や奨励がなくても、間接的または暗示的な促進行為が誘引侵害を構成する可能性があることが示されたのです。
さらに、誘引の「意図」(Intent)の立証に関しても、新たな視点が提供されました。企業の公開声明や市場戦略が、その意図を示す証拠として考慮される可能性が高まったと言えます。
一方で、この判決は訴え却下(Motion to Dismiss)の段階でのものであり、本案審理ではより厳格な基準が適用される可能性があることにも注意が必要です。今後、同様の事件が本案審理まで進んだ際に、裁判所がどのような判断を下すかが注目されます。
誘引侵害の法理は、技術の進歩や市場環境の変化に応じて常に進化しています。Amarin v. Hikma事件の判決は、その進化の一つの重要な節目となる可能性があります。今後、この判決を基に、より詳細で洗練された誘引侵害の判断基準が形成されていくことが期待されます。
法律家や企業法務担当者は、この分野の発展を注意深く見守り、自社の戦略に反映させていく必要があるでしょう。誘引侵害の法理がどのように発展していくかは、製薬業界だけでなく、特許法全体に大きな影響を与える可能性があるからです。
7. 結論
Amarin v. Hikma事件の判決は、製薬業界に新たな課題を突きつけると同時に、より公正で透明性の高い競争環境を作り出す機会も提供しています。ジェネリック医薬品メーカーにとっては、スキニーラベルの使用だけでなく、すべての公的コミュニケーションにおいて細心の注意を払う必要性が明確になりました。一方、ブランド医薬品企業には、特許保護をより強化し、競合他社の行動を精査する新たな機会が生まれています。この判決は、イノベーションの保護と医薬品へのアクセス向上という、時に相反する目標のバランスを取ろうとする米国の医薬品政策の縮図とも言えるでしょう。今後、業界関係者は、この判決の影響を慎重に分析し、それぞれの戦略を見直していく必要があります。最終的には、このような取り組みが、患者の利益につながる、より良い医薬品産業の未来を築くことにつながることを期待したいと思います。