AI関連技術の知財ランドスケープ

AIを使った商品やサービスが出始めているなぁと思っている方も多いと思いますが、AI関連の特許を見てみると、その数が爆発的に増加していることがわかります。AI関連サービスはまだ始まったばかりかもしれませんが、AI技術に関する多くの特許はすでに出願されています。

毎年の出願増加率が平均で28%

例えば、2012年から17年までのAI関連技術に対する特許出願を見てみると、出願増加率が毎年平均28%も上がっています。つまり、最初の4年ほどで出願が2倍になっています。

AI関連技術は汎用性がありどの業界でも応用できるものですが、出願では、telecommunications, transportation, personal electronic devices and computing, life and medical sciences, security, document management, manufacturing, and engineeringなどの用途を示した発明が多いとのことです。

またAI技術で特に多く出願されている分野は、machine learning, computer vision, natural language and speech processing, control methods, planning and roboticsなどです。

元記事には業界とAI技術分野で分析したIP知財ランドスケープテーブルが掲載されていますが、一番多いセグメントはtelecommunicationsの市場によるComputer Vision技術で、合計で22,871件の出願があります。

今後も増加傾向と予想

WIPOによると、データの増加とコンピュータの性能の向上で更にAI関連技術に関わる出願は増加していくだろうと予測されています。

アメリカにおけるAI関連発明出願

アメリカにおいて、AI関連発明は基本的に特許で守ることができます。しかし、コンピュータやソフトウェアが関わる発明は、subject matter eligibility test under 35 U.S.C. § 101をクリアーする必要があり、最高裁Alice判決とその後の判例がAI関連技術の特許性に大きな影響を与えます。

また、特許庁でも日に日に進歩していくAI技術に対応していくため、積極的にsubject matter eligibilityに対するガイドライン等を作成して対策を取っています。

AI関連発明を特許で守るためのポイント

アメリカでAI関連発明の出願を検討している場合、技術的な特徴に注目する必要があります。例えば、

  • The pre-processing of training data (e.g., preparing unique data sets for input into a particular AI algorithm)
  • The training process (e.g., improvements or adjustments to a machine-learning or neural network algorithm)
  • The application of trained models (e.g., to control machines or to provide unique results)
  • The hardware that executes a trained AI model, including any improvements to the hardware or its deployment in a given technical field

などです。

著作権で守る

また、AI技術を著作権(Copyright)で守ることもできます。例えば、データを所定のフォーマットにしたAIモデルを教育する前の準備段階に必要なAIデータなどは具体的な形があれば、著作権で守ることも可能です。

トレードシークレット

AIのアルゴリズムやデータを機密情報として扱うことで、トレードシークレットとして守ることもできます。このように社内で管理する場合、データやアルゴリズムの扱いやセキュリティを強化し、機密情報として扱っていく必要があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Ryan N. Phelan. Marshall Gerstein & Borun LLP (元記事を見る

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