肖像権をめぐりディープフェイクAIアプリに対して集団訴訟が起こる

著名人の名前、声、写真、肖像権を無断で使用したとして、ディープフェイクアプリ「Reface」の提供元であるNeoCortext社に対して、集団訴訟が提起されました。クレームでは、カリフォルニアの肖像権法に違反したと主張されており、名前、声、署名、写真、肖像権を広告や販売目的で知らずに使用する人は、同意がない場合、損害賠償の対象になると書かれています。今後もこのような訴訟は増えることが予想されるので、企業は生成AIツールが肖像権を誤って侵害しないようにするための積極的な取り組みを行うべきでしょう。

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生成AI(GAI)アプリケーションは、多くの著作権問題を提起しています。これらの問題には、GAIモデルのトレーニングが侵害に当たるのか、それともフェアユースで許されるのか、アウトプットが侵害された場合に誰が責任を負うのか(ツール提供者なのか、それともユーザーなのか)、アウトプットは著作権で保護されるのかなどが含まれます。発生しうる法的問題はこれだけではありません。様々なアプリケーションで発生したもう一つのGAI問題は、肖像権(パブリシティ権)に関わるものです。その一例として最近起こされた集団訴訟があります。

カイランド・ヤングは、ネオコルテキスト社に対し、彼や他の何千人もの俳優、ミュージシャン、スポーツ選手、有名人、その他の著名な個人の名前、声、写真、肖像を商業的に利用し、そのスマートフォンアプリケーション「Reface」の有料サブスクを許可なく販売したとして集団訴訟を提起しました。Refaceは、人気番組や映画、その他のバイラルなSNSのシーンで、ユーザーが憧れたり欲したりする個人と自分の顔を入れ替えることができるディープフェイクソフトです。

訴状では、カリフォルニア州の肖像権法に基づくクラスメンバーの権利侵害が主張されています。カリフォルニア州法3344条(a)では、「いかなる方法であれ、他人の名前、声、署名、写真、肖像を、広告や販売、またはサービスの購入を勧誘する目的で、その人の事前同意なしに故意に使用した人は、その結果損害を受けた人または人が被る損害について責任を負う」と規定されています。

GAIは強力なツールであり、多くの用途があります。多くの用途は問題ないでしょうが、ツールの一部、または、特定の利用方法は、法律の一線を越えてしまうものもあるでしょう。Refaceアプリは、有名人の画像を意識的に使用しているように見えます。他のいくつかのGAIアプリでは、モデルは、有名人の画像を含む膨大な量の画像でトレーニングされています。このため、一部のユーザープロンプトによって、出力に有名人の名前、画像、または似顔絵(NIL)が含まれる可能性があります。これは、GAIツールが特に有名人の画像を出力するように設計されていない場合であっても、起こりうる問題です。

責任ある企業は、GAIツールが不注意でパブリシティ権を侵害する可能性を最小限に抑えるために、積極的な措置を講じる必要があります。このような措置の具体例としては、GAIモデルのトレーニングに使用する画像から著名人の画像を除外する試みたり、著名人ベースのNILを指示する出力をユーザーが要求しないようプロンプトをフィルタリングすることなどがあるでしょう。

参考記事:Celebrity “Faces Off” Against Deep Fake AI App Over Right of Publicity

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