侵害を考慮してクレームを作成することは、常に課題となっています。しかしAIやソフトウェアの発明に関するクレームを作成する場合、単一当事者による侵害を証明できるクレーム、エンドユーザーが関わらないクレーム、何よりも侵害が検知しやすいクレームである必要があります。
価値のあるクレームが持ち合わせる要素
単一当事者による侵害:分割された侵害(divided infringement)問題に対処するために、クレームは単一の当事者によって侵害されることができるように起草する必要があります。
エンドユーザーが侵害者にならない:訴訟を検討する際には、エンドユーザーが最適なターゲットではない可能性(一般ユーザーだったり、自社の顧客のような場合)があるため、エンドユーザーによる侵害を要求しないようにクレームを起草することが有効な場合があります。侵害の検出が容易:さらに、特許権者は、救済を受けるためのもっともらしい権利を提供する事実を持っていなければならないため、侵害が検出できるようにクレームを作成することが重要です。
AI特許に関する侵害検知の問題とクレームの書き方
このように特許権者は、特許クレームが侵害されていることを主張する何らかの根拠を持っていなければなりません。しかし、特許クレームの範囲に、容易に検知できない機能が含まれている場合、特許クレームの範囲は、事実上、侵害を検討する際に役に立たない可能性があります。これは、AIシステムの詳細な知識がないと多くの機能を簡単に検出することが難しい人工知能において頻繁に起こりうる問題です。実際、AIシステムは、内部構造が外部には明らかではなく、場合によってはAIシステムのオペレータにさえも明らかではないブラックボックスシステムとみなされることがよくあるからです。
このようなAIシステムの特徴は、AI特許出願を作成・審査する際に慎重に考慮する必要があります。例えば、システムで使用されている特定のタイプの機械学習アルゴリズムを明示するのではなく、システムの入力と出力を対象としたクレームを作成する方が有用であることが多いです。もちろん、AIシステムに向けた広範なクレームは、しばしば§101に抵触したり、先行技術に基づいて単純に拒絶されたりするので、これは原理的には簡単ですが、実際にはそうではありません。とはいえ、権利行使の対象候補として上がっているAIシステムのマーケティング資料や公開資料でどのように表現がされているかを検討することは、重要です。
これらの問題を検討する際に、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network)や異なる動物の大規模なタグ付きデータセットを含む、動物の画像を検出するためのシステムに向けられたAI発明の例を見ることが役に立つかもしれません。この例示的なシステムが、畳み込みニューラルネットワークの動作に向けられた新規の側面を含むとしても、この発明に向けられたクレームは、そのような特徴を検出することが困難である可能性があるため、独立クレームにこれらの特徴を狭く記載することを避けるように注意する必要があります。
その代わりに、クレームは、潜在的な侵害者によって公に宣伝または議論される可能性が高い特徴に焦点を当てるようにすべきです。例えば、侵害者は、侵害しているシステムは、動物が異なる角度から撮影された場合でも、動物の異なる画像を検出することができると記述しているかもしれません。畳み込みニューラルネットワークのこれらの機能的特徴は、基礎となるアルゴリズムをクレームしなくてもできるかもしれません。例えば、画像が撮影された角度を補正するニューラルネットワークを適用するように構成された分類器をクレームするというのはどうでしょうか?このように簡単に検出できる特徴に焦点を当てることで、クレームは、潜在的な侵害者に対して強力なツールであり続けることができます。
AIクレームの作成を困難にしている問題は数多くありますが、クレームが主張される場合に非常に重要になる可能性があるため、侵害の検出を見落とさないようにすることが重要です。
参考記事:Drafting AI Claims in a Way That Infringement is Detectable