AIとビッグデータで変わる知財戦略

この20年間で特許権の価値がますます認識されるようになりました。多くの業界において、相当数の特許を所有していることは、企業のイノベーション能力と業界におけるリーダーシップを明確に示すものです。しかし、特許権保護への関心が高まる一方で、人工知能(AI)、機械学習、ビッグデータの出現により、知的財産権の将来や企業のイノベーションへの取り組み方について、重要な問題提議がなされています。

AIとビッグデータの普及は知財戦略の転換のきっかけ?

最近、IBMが特許出願ランキングでトップの座を失ったことが発表されました。IBMは過去20年間、このランキングでトップを維持していましたが、今ではサムスンやキヤノンなど他のテクノロジー大手の後を行くような形になっています。

IBMによると、特許を重視しなくなったのは意図的なものだと言います。IBMのSVPであるDarío Gil氏は、「2020年に(IBMは)特許の数値的なリーダーシップという目標を追求しないことにした」と発言しています。その代わりにIBMは、「ハイブリッドクラウド、データ、A.I.、自動化、セキュリティ、半導体、量子コンピューティングの特定分野における高品質でインパクトのある進歩の達成」にリソースを向けました。IBMのイノベーション保護へのアプローチは、「企業秘密と特許を、さまざまな組織や機関のチームが社内外のプレーヤーと協働する『オープンイノベーション』と呼ばれる研究開発のスタイルと並行して、バランスをとること」で、明確に定義された問題やコミュニティのもとで、オープンに知識を共有するのです」と語っています。

オープンイノベーションモデルは、企業が現在の事業を補完するために、外部のイノベーション経路を探索することを提案しています。従来のクローズドイノベーションモデルではもはや不十分であり、企業は新しい市場、技術、アイデアにアクセスするために、外部のパートナーと協力する必要があるという指摘もあります。

しかし、これは知的財産権がなくなるということではありません。IBMは、彼らの新しいアプローチが知的財産権の保護を排除するものではないことを注意深く述べています。「IBM は、ほとんどの企業と同様、著作権、商標、企業秘密、特許を使用してイノベーションを保護することに変わりはありません。創造したものを部分的に保護するための思慮深く積極的な知的財産戦略なしには、大規模なイノベーションを実現することはできません」と話しています。

従来の研究開発がIP保護へのより多様なアプローチに向かう中、企業にとって、自社の特許ポートフォリオの範囲と内容を徹底的に理解し、さらにそのポートフォリオが将来の研究開発にどのように関連するかを理解することが決定的に重要になります。非常に価値のある技術革新であることが判明したものを開示した場合、貴重な知的財産権を失うことになりかねません。また、共同研究の失敗により、技術革新が阻害されたり、主要な共同研究者なしでは自由に実施できないような技術が生まれたりする可能性もあります。したがって、特許を取得するか、技術を企業秘密として保持するか、あるいはその技術を共同研究者と共有するかという判断は、企業の既存のIPポートフォリオと全体的なビジネス戦略の両方に基づいて行わなければならない、非常に状況的な決定となります。

参考記事:How A.I. and Big Data Will (And Should) Change Your IP Strategy

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