アメリカでは最終拒絶通知後の選択候補は多くあります。しかし、その多さからどのような対応が個別案件にとって適切かは出願人にとって悩ましい問題ではないでしょうか?そこで今回は選択候補の1つであるAFCPに関して活用する際の判断基準を紹介します。
最終拒絶通知(Final Office Action)に対して、特許出願人はいくつかの選択肢を選択することができます。具体的には、1)審査官との面接を要求すること、2)2ヶ月ルールを利用して回答を提出すること、3)継続審査請求(RCE)で回答を提出すること、4)不服申立通知を提出すること、またはこれらを組み合わせて提出することができます。また、米国特許庁(USPTO)は、コンパクトな審査を改善する選択肢を提供することを目的として、AFCP(After Final Consideration Pilot)を導入しています。
この記事を書いている時点で、AFCPの現在のバージョンはAFCP 2.0です。AFCP 2.0の下では、審査官は、最終拒絶通知の後に補正の調査と検討に追加の時間を費やすことが認められています。出願が許可できる条件に達していない場合、審査官は出願人との面接を予定し、その結果について話し合うことになります。USPTOは、これにより「追加的な調査と検討」が可能になると強調していて、これは補正が認められない場合でも価値があると言っています。
このような追加の検討は出願人にとって有用に思えますが、実務において、審査官は、追加的な調査は実施するものの、より詳しい内容のフィードバックを提供するためには、補正に対して更なる検討が必要であると言ってくるでしょう。その結果、AFCPプログラムが提供する追加情報は、場合によっては最小限にとどまることがあります。このような場合には、対応の際の時間の延長手続きや、最終拒絶通知後の複数の回答の準備や提出などにクライアントの資金や時間を追加で費やす必要があるかもしれません。これは、知財予算が限られているクライアントにとっては避けたい問題です。
しかし、AFCPプログラムが有意義な結果をもたらす可能性が高く、その結果、クライアントに努力に見合う価値を提供できる状況があります。AFCPリクエストの最低要件として、1)最終拒絶後に回答を提出すること、2)電子ファイリングシステムを介してAFCPリクエストフォームを提出すること、3)クレームの範囲を広げないように回答の中で少なくとも1つの補正を行うこと、および4)フォローアップインタビューに参加する意思があることなどが挙げられます。これらの最低限の要件を満たした後は、AFCPが意味のある結果をもたらす可能性があるかどうかを検討する必要があります。私たちの経験では、クレームの範囲を大幅に変更しない補正の回答は、AFCPで解決される可能性が高いです。
補正がクレームの範囲を「著しく」変更するかどうかをどのように見極めるのか。これはケースによって異なりますが、クレームの範囲を大幅に変更する可能性が低い変更には、クレームの特徴の本質を変更することを意図していない(またはあまり変更しない)明確化のための変更、クレームの特徴を狭くして技術の特定の要素での読み取りを妨げるような軽微な変更、および追加の検索をあまり必要としないであろう他の変更が含まれます。変更がAFCPの下で効果的でない可能性が高いかどうかを調べる方法の1つは、単純に審査官に尋ねることです。AFCPの依頼を検討する際、審査官は、割り当てられた時間(約3時間)内に補正が合理的に解決できるかどうかを判断します。その結果、AFCPが意味のある結果をもたらすかどうかを最もよく知ることができるのは審査官です。
考慮すべきもう一つの要因は時間です。AFCPを提出すると、審査官は補正を検討し、通常45日以内に回答を提出します。3ヶ月の期限までに回答がない場合は、出願人が受け取った回答に返答するために期間の延長を申請する必要があります。このように、許可(allowance)が得られなかった場合は、延長手数料を支払った上で、他の措置(例えば、RCEに回答を提出したり、不服申立通知を提出したり)を講じて、出願を保留にしておく必要があります。このような理由から、AFCPの申請は早めに行うことが望ましいとされています。
AFCPプログラムを有効に活用するためのアプローチとしては、以下のようなことが考えられます。権利化に近づいていると思われる出願の最終拒絶通知を受けたときは、現在の拒絶を解決するために必要な軽微な補正を提案するために、審査官との面接を要求します。審査官が、補正はさらなる調査を必要とするが、許可される可能性が高いことを示した場合、AFCPプログラムが審査官の助けになるかどうかを確認してください。その場合は、できるだけ早く、できれば3ヶ月の期限までにAFCPの申請をしましょう。最終拒絶後の面接は裁量であることに注意しましょう。しかし、審査官は、出願人が出願を認められるような補正を提案している場合には、そのような面接を受け入れる可能性が高いです。審査官が面接を拒否しても、出願人の補正が軽微であると判断した場合は、AFCPを申請する価値があるかもしれません。
解説
AFCP 2.0に関しては、RCEや審判を回避して無駄な費用や時間を節約するために注目している日本の出願人も多いのではないでしょうか?AFCP 2.0はまだパイロットプログラムなので、(2021年9月21日以降)いつまで継続されるかはわかりませんが、使い方によってはとても有効なプログラムです。
今回の記事では、AFCPを使うべきケースをどのようにして見極めるかが話されています。AFCPを活用するなら、大きな補正は避けるべきで、「権利化に近い」案件を優先するべきです。また、AFCPを行う前に、審査官との面接を行い心象を確認することも有効です。
このようなアドバイスは有益ですが、AFCPは特に個別案件の内容や、審査経緯、審査官によって大きく「結果」が異なるので、今回話されたアドバイスを元に、現地代理人と相談しながら、特に有効だと思われる「条件にあった」案件を優先的に選んでいくべきでしょう。
最初はうまく行かないこともありますが、継続していくと特定の技術に関するAFCPのノウハウ的なものが社内や事務所内で蓄えられるので、今後の強みになってくるかもしれません。このAFCPはいつ終わるかはわかりませんが、継続されているので、何らかの形で正式に特許庁における審査に採用されることを見据えて、今のうちに社内にノウハウを蓄積することもいいかもしれないですね。
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まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Michael Ben-Shimon and Ryan McCormick. M&B IP Analysts, LLC(元記事を見る)