特許において、クレームの限定事項が明確に記述されているかどうかは、特許の有効性を左右する重要な要素です。今回、Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limitedの判決は、特許クレームの解釈において、限定事項間の表面上の矛盾をどのように扱うべきかという問題を浮き彫りにしました。本文では、この重要な判決を深堀りし、一見矛盾すると思われる限定事項が、実際には特許の不明瞭性(Indefiniteness)を生じさせない理由について探求します。特に、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)がどのようにこれらの限定事項を同時に満たすことが可能であると見做したか、その解釈の根拠と、特許クレームを起草する際の実務上の教訓に焦点を当てて考察します。
判例: Maxell, Ltd., v. Amperex Technology Limited,
Maxell v. Amperex判決:一見矛盾する限定事項の解釈
Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limited事件では、特許請求の限定事項が相反しているとして無効であるかどうかが争われました。一見矛盾すると思われる2つのクレーム限定は、以下のとおりです:
1- herein M1 represents at least one transition metal element selected from Co, Ni and Mn, [. . .]
2- herein the content of Co in the transition metal M1 of the formulae (1) and (2) is from 30% by mole to 100% by mole[.]
このように、1つ目の限定は、M1がコバルト、ニッケル、マンガンから選択される少なくとも1つの遷移金属元素を含むとするもので、2つ目の限定は、M1中のコバルトの含有率が30%モルから100%の範囲であるとするものでした。
Maxell社は、自社のバッテリー特許がAmperex社に侵害されたと主張しましたが、Amperex社は、これらのクレームが相反するとして特許が不明瞭(Indefiniteness)だと主張しました。地裁はこの限定事項が相反すると判断しましたが、連邦巡回裁判所(CAFC)は相反していないとして地裁の判断を覆しました。
連邦巡回控訴裁の見解:これらの限定が同時に満たされるのであれば矛盾は生じない
CAFCの見解の核心は、遷移金属元素はコバルト、ニッケル、マンガンを含み、同時にコバルトの特定割合要件を満たすことができるという解釈にあります。具体的には、一つ目の限定事項で「M1がコバルト、ニッケル、またはマンガンから選ばれた少なくとも一つの遷移金属元素を表す」とされ、二つ目の限定事項で「遷移金属M1のコバルト含有量がモルで30%から100%である」とされています。CAFCは、これらの限定事項が、一つの遷移金属元素がコバルト、ニッケル、マンガンのいずれかを含み、かつコバルトが指定された比率で含まれる場合に、同時に満たされ得ると解釈しました。そのため、限定事項が表面上矛盾しているように見えても、実際には特許請求の範囲を正確に定義することが可能であると結論付け、不明瞭さは存在しないとしました。この解釈は、クレームの文言を、個々の限定を切り離すのではなく、全体としてまとまったものとして見ることの重要性を強調しています。
特許クレームドラフトへの影響
今回の事件は、特許請求の限定事項の明確なドラフトと、それらの限定事項がどのように相互作用するかを理解することの重要性を強調しています。CAFCの判断は、請求項の限定事項が表面上相反しているように見えても、それらが同時に満たされ得る場合、請求項を不明瞭(indefinete)とはみなさないことを示しています。このことから、実務家にとって以下の点が重要であると言えます。
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明確かつ正確な請求項の起草:潜在的な曖昧さを避け、不明瞭さに関する争いの原因となる可能性がある請求項を、明確かつ正確に起草することが必要です。
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請求項の限定事項の相互作用の考慮:異なる請求項の限定事項がどのように相互作用するかを理解し、広義の限定と狭義の限定の矛盾がなく、同時に満たされ得るようにすることで、請求項が不明瞭と判断されるのを防ぐ必要があります。
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請求項を全体として読む:孤立した限定事項に焦点を当てるのではなく、請求項の言葉を全体として考慮する包括的なアプローチを採用することが重要です。
この事件は、特許が不明瞭さに関する挑戦に耐えられるようにするためには、優れた請求項の起草と特許法の原則への深い理解が最も重要であることを思い出させてくれます。
結論
CAFCにおけるMaxell v. Amperex事件の判決は、広範なクレーム限定と狭範なクレーム限定の微妙な相互作用、およびそれらが特許クレームの明確性に与える影響に光を当てています。クレームの限定が同時に満たされる場合、矛盾するものではないことを確認することで、裁判所は特許法における明確性の微妙な境界線をナビゲートするための貴重な指針を提供しています。この判決は、クレームの明確性の境界を明確にしただけでなく、包括的なクレーム解釈と思慮深い特許ドラフティングの重要性を強調しています。