次世代通信技術の5Gは情報通信の分野に限らず幅広い分野での発明に貢献することが期待されています。そこで今回は特許という側面から5Gの分野における大手企業を分析してみます。
5Gに関わる規格必須特許(SEPs)
まずは、5Gに関わる規格必須特許(Standard Essential Patents)を見てみましょう、2018年時点で実に1,345件もの特許(と5600もの特許出願)が5Gに関わる規格必須特許として宣言されています。
3Gや4Gは主にスマートフォン業界の企業が関わっていましたが、IoTや自動運転などの技術でも5Gは重要な位置にあるものなので、幅広い分野のプレイヤーがさまざまな規格団体を通してSEPを宣言していくと考えられます。
3Gや4Gでは特許ライセンスにおけるロイヤルティー収入は大きな事業なので、5Gでも3Gや4G以上に特許ライセンスビジネスは重要視されると思われます。
現在のSEP保有者ランキングを見ると、トップ5は、Samsung、Huawei、ZTE、Ericsson、Qualcommです。日系の会社でランクインしているのはSharpで8位でした。Sharpは「鴻海(ホンハイ)」の傘下ですが一応日系としておきます。
自動車分野
特に顕著なのが自動車分野における5GのSEP活動で、特に2017年と2018年に規格必須特許として宣言された特許と特許出願の総数は目を見張るものがあります。
5G規格のために積極的に技術提供をおこなっている企業
SEPとは別の切り口で5Gを見てみると、技術提供があります。これは、様々な規格団体で規格を成立させるために技術的な情報の提供をおこなうことですが、ここで活発的に活動している企業も5Gを先導する企業と言えるでしょう。
ランキングを見るとSEP保有者と重複するケースが多いです。Top 5を見ると、Huawei、Ericsson、Hisilicon、Nokia、Qualcommとなっています。
5G規格会議への参加技術者数
これも重要な指標の1つです。5Gの規格を決める会議等により多くの技術者を送っている企業はそれだけ5Gに積極的に投資していて、5G規格の決定においても重要な立場にいることがほとんどです。
ランキングを見ると、これもまたSEP保有者と重複するケースが多いです。Top5を見ると、Huawei、Ericsson、Samsung、Nokia、Qualcommとなっています。
今後のためにできること
5G規格はさまざまな分野で応用されるもので、5G規格に関わるSEPはこれからも増えていくことが考えられます。そのため、5G規格に関わるSEPの所有企業や5Gを使用する見込みがある企業は5Gを使用するためのコストなどを早い段階から考えておく必要があります。
規格に関わるSEPのロイヤルティープログラムに関して、アメリカではまだ明確なガイドラインはなく、訴訟も絶えません。また、SEPに関わるロイヤルティーなどは時と共に大きく変革していくことが予想されます。
特に、パテントトロールなどのNPEが5G関連の特許を権利行使するようになってくると、ライセンスを受けるための交渉などが難航する恐れがあります。
まとめ
5Gはこれまでにない大きな市場を作り出すでしょう。そのため、5Gに関わる規格必須特許の取り扱いは重要になってきます。特に、5GのSEPでトップを走る企業にとっては、5Gはとても魅力的なライセンス分野なので、今後5Gの発展と共に、アメリカにおけるSEPの扱いも変わっていくと思われます。
元記事には、グラフも掲載されているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Tim Pohlmann. IAM (元記事を見る)