特許出願人、審査官にとっても、2014年に最高裁が出した判例Aliceは悩ましい問題です。Alice判決以降、どのようなものが特許法101に明記されている特許適格性(patent eligibility)を満たすのか継続的に裁判所で議論が展開されています。しかし、特許庁のbusiness method art unitではAlice判決以降、ごく少数の特許出願しか権利化されていません。この101問題に関して、特許庁長官のIancu氏が9月におこなわれたIPOの会合で私見を示しました。
まずIPOの会合で、Iancu氏は、101に関わる矛盾を示しました。なぜ特許法102(新規性)や103(進歩性)を満たす発明が発明コンセプトに欠けてしまっていることによって、101を満たさないと判断されてしまうのか?発明に関する開示が十分あり特許法112を満たすのに、なぜ101において「抽象的」と判断されて特許として成立するための条件を満たさないと判断されてしまうのか?現在のルールではどこに境界線を引いていいのかわからない不透明な状態が続いていると発言しました。
Iancu氏は、特許法101の適用をシンプルにするため、過去の判例で101を満たしていないとされた発明を3つのカテゴリーにまとめました。
- 数学的なコンセプト(Mathematical concepts like mathematical relationships, formulas, and calculations)
- 人間の間の相互作用を整理する方法(Certain methods of organizing human interactions, such as fundamental economic practices, commercial and legal interactions, managing relationships or interactions between people, and advertising, marketing, and sales activities)
- メンタルプロセス(Mental processes, which are concepts performed in the human mind, such as forming an observation, evaluation, judgment, or opinion)
特許庁におけるルール改正が噂されている特許法101の扱いですが、以上の3つのカテゴリーを特許適格性から除外するようなものが提案されるのではないかと予想されています。
また、現在特許法101における分析において実務的な応用の明記が求められる(“directed to” requirement )ですが、この要件についてもルール改正で何らかの改正や追加説明が期待されています。
Iancu氏がIPOの会合で発表した内容が特許庁における次回の特許法101関連ルール改正に盛り込まれれば、Alice判決後不透明だった特許適格性に対する問題が明確化することが期待されています。どのような発明が101を満たすのか(または満たさないのか)がルールで明記されれば、出願前に特許性を判断できるので、予想ができ、特許出願人にとっても、審査官にとってもよいものになるでしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Keith Lim and Russell Jeide. Knobbe Martens (元記事を見る)