今年の4月に SAS 判決が最高裁で下されてから5ヶ月の統計を見たところ、 SAS 以前とSAS 以降で institution の許可率と IPR の申し立て数に変化がありました。今回は、もの2つの点について詳しく統計データを見ていきます。
SAS 判決は2018年4月末にあったので、2018年4月末までを Pre-SAS、2018年5月以降を Post-SAS として統計データを見ていきます。ちなみに、統計データは、USPTO が発表している公式データを使っています。
Institution 許可率
2018年5月から9月まで Post-SAS において、 IPR の開始判決(institution decisions)は538件発行されました。その内訳は、開始が許可された案件304件で、開始が却下された案件234件でした。 この数字から Institution 許可率として計算すると、56.5% となります。一方、SAS判決前の5ヶ月間、2017年12月から2018年4月までの Pre-SAS において、IPRの開始判決 (institution decisions) は611 件発行しました。その内訳は、開始が許可された案件407 件で、開始が却下された案件204 件でした。 この数字からInstitution 許可率として計算すると、66.61% となります。つまり、SAS判決前後5ヶ月間で比較すると、Institution 許可率が10%も減っています。
個別案件の分析などはしていませんが、SAS 判決の結果、申し立てがあったクレームや理由の一部のみに対して IPR を開始する partial institution がなくなったので、Pre-SAS までは partial institution で開始されていた IPR の一部が Post-SAS では却下されることになったのだと思われます。
IPRの申し立て数
次に、IPR の申し立て数について、 Pre-SAS の5ヶ月間と、Post-SAS の5ヶ月間を見ていきます。 Post-SAS では、月平均で140.2件の申し立てがありました。一方、 Pre-SAS では、月平均で118.6件でした。これは、月平均で申し立て件数が18.21%も増加したことになります。
判決が下る直前に申し立てが抑えられていて直後に急増したので、それを例外としてデータから外すと、Pre-SAS で月平均126.25 件、Post-SAS で月平均135.35件になります。 Pre-SAS と Post-SAS における IPR 申し立て数の増加幅は縮まりますが、それでも、月平均で申し立て件数が18.21%も増加したことになります。
SAS 判決前後で明確な変化がありました。しかし、このトレンドが継続していくのかはわかりません。しかし、USPTO 所長の Iancu 氏は、IPR 改革を掲げているので、今後も IPR には大きな変化が予想されます。変化を続ける IPR がどう変わっていくのか、今後もモニタリングしていく必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: David Anderson and Joseph M. Sauer (Joe). Jones Day (元記事を見る)