政府機関がAIA再審査手続きを申し立てることができるか最高裁で審議へ

アメリカ最高裁は、連邦政府機関がIPRやCBMなどのAIA再審査手続きを申し出ることができるか審議することになりました。 Return Mail, Inc. v. United States Postal Serv., Case No. 17-1594 (Supr. Ct. Oct. 26, 2018)。今回、最高裁で審議される問題は、政府はAIA再審査手続きを申請できる「人」なのかというものです。

背景

Return Mailは、受取人不明の郵送物に対する手続きに関する特許をもっています。Return Mailは、その特許の権利行使を行い、アメリカの郵便局を特許侵害で訴えました。この特許訴訟の対応として、郵便局は対象特許はビジネス方法特許だとし、Covered Business Method(CBM)reviewをPTABに要請。

このCBM reviewに対し、特許権者のReturn Mailは反論。Return Mailは郵便局のような政府機関はAIA再審査手続きを申請できる「人」ではないとし、郵便局はAIA再審査手続きであるCMB reviewを申請できる立場ではないと主張しました。

しかし、PTABはその主張を退け、郵便局によるAIA再審査手続きの申し立ては禁止されていないとし、CBM reviewを継続。その結果PTABはReturn Mailの特許は無効と判断。この結果を不服とし、Return Mail はCAFCに上訴。CAFCでもPTABの判決が支持され、その後、Return Mail は最高裁に上訴。最高裁は上訴の申し立てすべてに対して対応する義務はありませんが、今回、上訴の一部に対して最高裁で審議をすると発表しました。

まとめ

個人的には政府機関も特許侵害の被告対象になるのであれば、政府機関でもIPRやCBMなどのAIA再審査手続きを申し出ることができるべきだと思います。何はともあれ、この案件がKavanaugh最高裁判事を含めた9人体制での初めての特許関連の最高裁審議になると思います。そのような意味で、興味深い審議になりそうです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Amol Parikh – McDermott Will & Emery(元記事を見る

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

商標
野口 剛史

メタバースとNFTにおける知的財産の保護

ブランドがすでにもっている「物理的な商品に関する既存の商標登録がメタバースにおける侵害にも有効か?」はまだ未知数です。現在そのような訴訟がいくつか行われていますが、まだ裁判所での判断は出ていません。そこで、各ブランドは積極的にメターバース・NFT関連の商標出願を行っています。

Read More »
Contract-signing
契約
野口 剛史

契約における知財保証の対応責任と保証責任

知財や技術に関する契約のほとんどに項目として入っている知財保証(IP Indemnification )。知財保証は一般的ですが、文言によっては、対応責任や保証責任のリスクが異なります。知財保証を含む契約を結ぶ場合、知財保証に関して十分交渉し、リスク管理をおこなうことが大切です。

Read More »