特許権放棄の問題はWTOの決議以降も継続されるおそれがある

現在WTOでCOVID-19ワクチンに関する特許権の放棄が議論されていますが、WTOで特許権放棄が決まったとしても、WTO加盟国が自国でどのような対応をするかによって本来意図する形で進まない可能性があります。

WTOにおける164の加盟国による合意の見通しはまだ立っていませんが、それより大きな問題は、WTO加盟国が、TRIPS協定の義務に反しないで、現地で特許を取得したワクチンの現地製造を認める法律を制定できるかどうかです。

TRIPS協定は、原則、加盟国に対し「技術のすべての分野」において強力な特許制度を構築することを求めています。いくつかの例外はあるものの、このTRIPS協定における各国の義務がCOVID-19パンデミックにおける特許保護の放棄や強制的なライセンシング(compulsory licensing)に関する自国での法整備を難しくする可能性があります。

WTOのコメントによると、今回の特許放棄は一時的な措置であるため、加盟国の間ですでに、放棄の期間についてより具体的な議論が進んでいるようです。しかし、WTOでは加盟国すべての合意が必要で、特許権という複雑な問題について話し合いが行われているという背景から、法的な整備に時間がかかることが懸念されています。

参考記事:Mechanics of COVID-19 Vaccine IP Waiver in View of Trade-Related Aspects of IP Rights

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