特許権放棄の問題はWTOの決議以降も継続されるおそれがある

現在WTOでCOVID-19ワクチンに関する特許権の放棄が議論されていますが、WTOで特許権放棄が決まったとしても、WTO加盟国が自国でどのような対応をするかによって本来意図する形で進まない可能性があります。

WTOにおける164の加盟国による合意の見通しはまだ立っていませんが、それより大きな問題は、WTO加盟国が、TRIPS協定の義務に反しないで、現地で特許を取得したワクチンの現地製造を認める法律を制定できるかどうかです。

TRIPS協定は、原則、加盟国に対し「技術のすべての分野」において強力な特許制度を構築することを求めています。いくつかの例外はあるものの、このTRIPS協定における各国の義務がCOVID-19パンデミックにおける特許保護の放棄や強制的なライセンシング(compulsory licensing)に関する自国での法整備を難しくする可能性があります。

WTOのコメントによると、今回の特許放棄は一時的な措置であるため、加盟国の間ですでに、放棄の期間についてより具体的な議論が進んでいるようです。しかし、WTOでは加盟国すべての合意が必要で、特許権という複雑な問題について話し合いが行われているという背景から、法的な整備に時間がかかることが懸念されています。

参考記事:Mechanics of COVID-19 Vaccine IP Waiver in View of Trade-Related Aspects of IP Rights

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

訴訟
野口 剛史

中国での米国訴訟の機密情報開示で4万ドルの制裁金が発生

アメリカではDiscoveryによって訴訟相手の機密情報を取得できますが、取り扱い方を間違えると保護命令に違反してしまい制裁金が発生したり、裁判に不利な推定をされてしまう可能性があります。今回は、保護命令で保護されているグループ外にDiscoveryで得られた情報を開示してしまい制裁金が課された判例を紹介します。

Read More »
特許出願
野口 剛史

特許適格性フローチャート

2019年1月7日にUSPTOから発行された2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance (“Guidance”)を参考に、いくつかの特許事務所が独自の特許適格性に関するフローチャートを作成して公開しています。今回はその中から3つ紹介します。

Read More »
chess-strategy
特許出願
野口 剛史

審査官の評価システムを考慮した出願戦略(仮定と有効な特許の作成方法)

審査官は生産性と質の面で評価され、その評価は担当する特許案件の権利化にも影響を与えています。今回は、前編として、審査官の評価システムを理解した上で、審査官評価システムを実務に応用する際の仮定と、審査官の審査基準やバイアスに依存しない、有効な特許を作る方法を考えていきます。

Read More »