化学や医薬の特許において、「予想外の結果」は自明性への反論としてとても強力なツールになります。しかし、どのような結果が「予想外」なのか?それをどう明細書で示すべきか?予想外の結果が得られたとして、そこまで特許出願に手間をかけるべきか?これらの質問について答えていこうと思います。
すべての発明は古いものの組み合わせです。自明性の主張を行う場合、それぞれがクレームの別々の要素を開示している文献の単なる組み合わせ以上のものでなければなりません。材料が重要なのではなく、最終的な組み合わせが重要なのです。
しかし、自明性の法則は、このようなイノベーションに対する哲学的な見解にどのように対処しているのでしょうか?画期的なKSR v. Teleflex事件では、以下のように組み合わせの構造の基礎が築かれています。「周知の方法による周知の要素の組み合わせは、予測可能な結果をもたらす以上のことがない場合、自明である可能性が高い。」 KSR Int’l Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. 398, 407, 415 (2007).
判例法は、その後、「予測可能」(predictable)という言葉に注目することになります。つまり、予測可能な結果をもたらす発明は、特許性があるとみなされる可能性がはるかに低いということです。黄色と青色を組み合わせれば、緑色になることは予測可能です。溶液に酸を加えれば、pHが下がることは予測できます。これらは、通常の技術者であれば、常識的に考えて、このような結果を予測できたはずなので、特許性のある発明とは言えません。しかし、予想外の結果(unexpected results)をもたらす発明は、こうした予測可能性の議論に勝つ可能性が高くなります。
予想外の結果とは?それをどう示すべきか?
「予想外の結果」は、化学や医薬の特許において、既知の要素の組み合わせが予測不可能な結果を出したので、非自明であるという説明をするために一般的に用いられます。予想外の結果とは、(1)特定のデータポイントにおける急激な増加または減少、(2)クレームされた組み合わせの予想外の有効性、(3)個々の要素による相乗的な結果、を示すデータの形で示されることが多いです。
重要なのは、クレームされた組み合わせの結果が有益であっただけでなく、組み合わせ以外の個々の要素から予測できたであろうことと比較して、予期せぬものであったことを示すことです。予期せぬ結果は、なぜ予期せぬ結果なのか、そして特許権者がクレームされた組み合わせから通常何を期待したのかを明確に論じた上で、明細書にチャート、グラフ、例の形で記載されるべきです。
予想外の結果は文献の組み合わせに汎用的に反論できる強力なツール
予期せぬ結果の核心は、結果が予測不可能であったため、先行技術の組み合わせは自明でなかっただろうということです。この主張は、各文献の開示内容ではなく、文献の組み合わせに焦点を向けています。
引用文献の組み合わせに反論する方法は他にもありますが、これらの方法はそれほど強力ではありません。例えば、文献が互いに教示していない(teach away)の場合、あるいは、「文献B」を追加すると「文献A」のデバイスがその意図する目的に対して不満足なものになる場合、文献は組み合わせられるべきではありません。しかし、このような主張は文献に特有のものであり、自明性の主張において別の新しい文献を使用する場合、容易にこれらの反論を回避することができます。予期せぬ結果の議論は、クレーム要素自体に焦点を当て、得られた予期せぬ結果のために、なぜその組み合わせが自明でなかったかを議論するものです。
予期せぬ結果を証明するのは大変なことです。特許出願の際に実験データを提供するには、費用と時間がかかります。そして、特許出願人は、特許の優先日をできるだけ早く取得するために、「特許庁との競争」という考え方になります。しかし、化学や医薬の特許では、予期せぬ結果は、特許庁での自明性の議論や訴訟での無効性の議論に打ち勝つための最も強力な根拠となり得ます。
参考記事:Predicting the Unpredictable – When is a Combination Obvious?