米国議員は特許のポートフォリ化に悲観的な考えを持っている

特許は複雑で分かりづらいため、都合のいい社会問題の「敵」として扱われてしまうことがありますが、実際に法律の制定に関わる議会で働く議員の一部が特許戦略の1つである主力技術に対する複数の特許出願によるポートフォリ化に関して否定的な考えを持っていることがわかりました。今回の発言は知財業界の人間としては信じれない発言なので、困惑する内容になっています。

薬が高いのは権利者によるパテント・シックレットが行われているから

2022年6月8日、超党派の米国上院議員団は、米国特許商標庁のKathi Vidal長官に書簡を送り、PTOがパテント・シックレット(patent thickets)に関する措置を講じるよう要請しました。

上院議員によると、「大量の特許が単一の製品または単一の製品のマイナーなバリエーションをカバーしており、一般にパテント・シックレットとして知られている」ため、「何百万人ものアメリカ人に悪影響を与える」のだそうです。

上院議員は、バイデン大統領の最近の発言を引用し、パテント・シックレットは、「ジェネリック医薬品やバイオシミラーとの競争を何年も何十年も阻害したり遅らせたりするために悪用され、アメリカ人がより安価な医薬品を入手することを否定してきた」と述べています。

上院議員によれば、「医薬品業界では、送達機構、用量、製剤にほんの少し、表面的な調整を加えるだけで、企業は一つの医薬品に何十、何百もの特許を取得することができる」、「こうした行為は後発医薬品の生産を妨げ、競争を阻害し、さらには議会が定めた特許期間を超えて独占権を延長することもできる」と述べています。

上院議員は、「継続特許やその他の類似性の高い特許」の普及に具体的な懸念を表明しました。上院議員によれば、「特許法は、1つの発明につき1つの特許を想定しており、1つの創作に基づく大規模なポートフォリオを想定していない」のに対し、「継続特許は現在、特許出願全体のほぼ4分の1を占めている」のだそうです。

上院議員らは特許庁に質問リストを提出し、特許庁が2022年9月1日までにこれらの質問に関する規則制定案の通知または意見公募を行うよう要請しました。

知財業界で長年いいとされている戦略と政治家の特許への理解の欠落

この記事で言われているパテント・シックレット(patent thickets)はいわゆる特許のポートフォリオ化で、重要な技術や主力商品に対して多数の特許を出願し、他者が簡単に回避設計をして市場に入ってこれないようにする戦略です。この戦略には資金と労力がかかりますが、知財業界ではいい戦略として長年知財のポートフォリオ化への取り組みが行われてきました。

しかし、このような活動に関して直接非難する内容の書簡を見ると、政治家の正しい特許への理解の欠落があると言わざる負えません。特に、「特許法は、1つの発明につき1つの特許を想定しており、1つの創作に基づく大規模なポートフォリオを想定していない」というような発言は、現実のプラクティスに沿った発言ではありません。

また、もし発明1つに特許1つとなった場合、アメリカにおける特許出願は大幅に落ち込み、唯一長年黒字である特許庁の財源が悪化し、アメリカの強みである技術力や知財力が失われる可能性があります。

今回の書簡によって何かすぐに変わるわけではありませんが、特許法改正などは議会によって行われるため、特許に対する正しい知識を持った議員が多くなり、その正しい理解のもとで次世代の特許法案を議論していただきたいものです。

参考文献:U.S. Senators Request PTO Action on Patent Thickets

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