最高裁判決:譲渡人禁反言の原則の適用範囲が大幅に限定される

米国最高裁判所は、Minerva Surgical v. Hologicにおいて、譲渡人禁反言の原則(the doctrine of assignor estoppel )は、譲渡人の無効性の主張が、譲渡人が特許を譲渡する際に行った明示的または黙示的な表明と矛盾する場合にのみ適用される、との判決を下しました。

今回の判決で、譲渡人禁反言の原則の適用範囲がかなり狭まったことになり、従業員が雇用の過程で開発された「将来の発明」に関する特許権を将来的に雇用者に譲渡する従業員契約には、この法理は適用されないと指摘しました。

判例:Minerva Surgical v. Hologic

背景

今回問題になった譲渡人禁反言の原則は、何世紀にもわたって受け継がれてきた法理であり、譲渡人が、譲渡した特許権の有効性を後になって否定する主張を妨げるものです。

現在の雇用契約では、雇用開始時の標準的な契約の一部として、将来の発明を譲渡することを従業員に要求するのが一般的であるため、この原則がますます注目されるようになり、最高裁に達しました。過去25年間で、特許の譲渡の80%以上がこのような雇用契約を介して行われています。

Minerva Surgical v. Hologicのシナリオでは、発明者が自分の設立した会社に特許出願の権利を譲渡。その特許権は後に売却され、最終的にはHologic社に買収されましたが、Hologic社は当初の出願にはない新しい請求項を含む継続出願を行いました。

発明者はその後、新たにMinerva Surgical社を設立し、Hologic社から特許侵害で訴えられます。Minerva社は、継続出願に含まれていた請求項の1つが、発明者のオリジナルの明細書の範囲を超えていたため、記述の欠如(lack of written description)により無効であると主張しました。

連邦地裁は、譲渡人禁反言の原則を根拠にMinervaの無効の抗弁を却下し、連邦巡回控訴裁はこれを支持していました。

最高裁における判決

最高裁は、譲渡人禁反言は「フェアディーリングの基本原則が働く場合にのみ適用されるべきである」とし、連邦巡回控訴裁の判決を取り消しました。

判決文を見ると、裁判所の最大の関心事は、特許譲渡の文脈において、譲渡人が「特許が有効であることを保証する」場合にのみ、この原則が適用されるようにすることのようです。そのため、譲渡人が、無効性の抗弁に抵触するような明示的、あるいは、暗黙的な表明をしていない場合、この抗弁を主張することは不公平ではないとしました。

最高裁は、連邦巡回控訴裁判所がこの譲渡人禁反言の原則を「あまりにも拡大して」適用していたことを認め、この判決は「原則の境界を守る」ことを目的としていると述べています。

最高裁は、異議申し立てのあったクレームが、発明者が譲渡したクレームよりも「実質的に広い」ものであるかどうかについて回答するよう、連邦巡回控訴裁判所に命じ、再送しました。最高裁の判断によると、もしそのクレームが実質的に広いと認められれば、無効性の抗弁を阻むために譲渡人禁反言は適用されないとしています。

今後の展開

譲渡人禁反言の原則の適用範囲がかなり狭まったので、今後は譲渡人禁反言の原則が用いられるケースが極端に減りそうです。

特に、従業員が雇用中に開発された将来の発明の特許権を譲渡する「共通の雇用契約」によってカバーされる将来の発明には、譲渡人禁反言の原則は適用されないことが明確になったので、今後は、元社員の発明家が起業した時に、勤めていた会社から自分が発明した特許で訴えられたときであっても、譲渡人禁反言の原則が適用されず、訴えられた発明者は特許の有効性について反論することができます。

参考記事:U.S. Supreme Court “Polices” the Boundaries of Assignor Estoppel

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