テキサス州西部地区連邦管区のPTABでの扱いが変わりつつある?

訴訟手続の速さで人気を集めているテキサス州西部地区の裁判地ですが、PTABがその裁判地における訴訟進行度合いに疑問を提示するようになってきました。この傾向が進むと、テキサス州西部地区の特許訴訟であっても、IPR手続きが開始されやすくなるかもしれません。

テキサス州西部地区連邦管区(The Federal District for the Western District of Texas、略してWDTX)は、特許訴訟のメッカ。2016年以降、特許訴訟の件数は約700%増加。現状では1人の連邦裁判官(Hon.Alan Albright)が全米の特許訴訟案件の20%を担当しているという状況にあります。 

WDTXの人気の理由はそのスピード。特許訴訟の際に頻繁におこなわれるPTABにおけるIPRの特許無効手続きを凌ぐ勢いで訴訟手続を進めるため、多くの特許権者にWDTXが選ばれるようになっていった。このようなWDTXの特徴から、PTABでIPR手続きをおこなっても、開始されないということがよくありました。

しかし、PTABがWDTX訴訟における詳細を見るようになり、傾向が変わりつつあります。

 WDTXがものすごい勢いで特許判決を出す中、各案件ごとの分析レベルが問題視されるようになりました。また、スケジュール通りに進むとWDTXにおける公判が1日に20件という日も出てくる事態になっていて、現状のスケジュールでは既存の訴訟案件をこなすことが物理的にできない状態にあるという指摘も。

実際にIPRの手続き開始(institution)の判断をする際に、PTABのALJ(Administrative Law Judge、行政法判事)がWDTXにおける特許訴訟のスケジュール管理やクレーム解釈の進行具合に対して疑問視するケースも出てきました。参考:IPR2020-01280

参考文献:WDTX “Implausible Schedule” & Cursory Markman Order Highlighted

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

特許出願
野口 剛史

特許のNFT化の可能性と未解決の問題

アメリカではIPweとIBMが先導して特許をNFT化するという動きがあります。Non-fungible tokens (NFTs)は、JPGファイルが有名オークション会場で6900万円で落札されるなどアート面で注目されていますが、知的財産の分野でも活用が検討されているものです。今回は、特許のNFT化の可能性と未解決の問題について話してみます。

Read More »
再審査
野口 剛史

PTOがガイドラインを発行: 出願人が認めた先行技術はIPRの基礎にはならない

明細書内の背景の説明などで出願人が特定の事柄を先行技術として認めることがあります。今回のガイドラインでそれ自体はIPRにおける特許のチャレンジのベースにはならないことは明確になったのですが、自明性の主張の際に、出願人が認めた先行技術が特許権者に不利な形で活用される場合があるので、出願時に先行技術についての説明は必要最低限にとどめるべきでしょう。

Read More »