PTABでの特許無効手続きと特許訴訟の専門家は分けるべき

PTABと地方裁判所/ITCの手続きが並行して行われる場合、特許権者も申立人も、それぞれの手続きで同じ専門家を使うか、それともそれぞれに専門の専門家を雇うかを決めなければなりません。

共通で同じ専門家を使うことにはメリットもあるが…

PTABと地方裁判所で同じ専門家を使う場合、効率が上がり、意見の一貫性が高まるということが期待されます。

しかし、それ以上にアメリカの訴訟システムを考慮したときに、デメリットになる部分の方が大きいかもしれません。

なぜ別々に専門家を雇うべきなのか?

別々の専門家を使用するのが望ましい理由はアメリカの訴訟の仕組みにあります。

まず、別々の専門家を雇うことで、PTABの宣誓証言のための書類を制限することができます。また、PTABの手続きにおいて、相手側の弁護士が、並行して行われている訴訟のためのネタを引き出すために質問をしてこないので、宣誓証言を延長する傾向がありません。

また、別々の専門家を使用することで、訴訟代理人が同じ証人を2回尋問するチャンスを与えることを避けられます。

United Therapeutics Corporation v. Liquidia Technologies, Inc., 1-20-cv-00755 (DDE 2021-05-17, Order) (Jennifer L. Hall)では、別々の専門家を使用することで、特許権者は以前の解釈に関する質問を開示する必要がありませんでした。

しかし、同一の専門家を使用していた場合、おそらく、PTABに提出された以前の提出物は、デラウェア州裁判所での専門家の意見形成により関連性があると考えられれ、開示しなければならなかったかもしれません。

参考文献:Using the Same Expert at the PTAB & District Court?

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