2020年はPTABにとって多忙な年でした。COVID-19パンデミックにも関わらず、2020年度のAIA裁判の申立件数は全体的に増加し、2021年も特許訴訟の増加に伴いAIA裁判件数も更に増加することが予測されています。今回は、件数のトレンド、統計データによる当事者の有利・不利、2021年の予想を考察していきます。
申立件数が増加に転じる
2020年のAIA裁判(IPR、PGR、CBMを含む)の新規申立件数は1500件程度で、2年間の減少傾向を逆転させました。
ほとんどの分野で申立件数が増加しているにもかかわらず、バイオテクノロジー/製薬分野のTC1600では件数はほぼ過去最低となっています。TC1600の申立件数は2017年に高水準で推移していましたが、その後大幅に減少しており、2020年の申立件数はわずか67件にとどまっています。
傾向としては申立人有利
AIA裁判の結果を見ると、すべての主題分野において、2020年は前年に比べて特許異議申立者が勝訴した件数が多いです。統計的に見ると、AIA裁判が開始(institute)された場合、1つ以上のクレームに特許性なしと判断される可能性が80%以上あります。2020年に書面による最終決定(final written decision)を受けた413件の特許のうち、345件の特許が1つ以上のクレームを失い、111件の特許が全体として特許性がないと判断されました。
このようなデータから、特許権者がPTABでの特許性への異議申し立てを乗り切るための最善の策は、手続きの開始(institution)を回避することです。開始確率(institution rate)は60%前後で推移しており、裁量的拒絶(discretionary denial)が多様されない限り、2021年も開始確率はこの水準に留まると予想されます。
和解率については全体の約20%にとどまり、2020年は過去最低の水準となっています。これは特許権者が過去よりも質の高い特許を主張するようになったことで、問題を迅速に解決しなければならないというプレッシャーを感じることが少なくなったことによるのではないでしょうか?
2021年は更に増加するかも
2021年は、IPRの件数は引き続き増加し、一般的には地方裁判所の訴訟件数の増加に連動すると予想されています。しかし、テキサス州西部地区が新たな特許のホットスポットになる中、特にPTABの裁量による拒絶が頻繁に行われる場合には、訴訟における被告側がIPRを積極的に活用することが少なくなるかもしれません。
テキサス州西部地区のAlbright判事は、IPRが提出されても訴訟を停止せず、可能であればPTABにおける判断よりも早く訴訟における判決を下す意向を示しているので、特許訴訟の裁判地や担当判事によっては、被告にとってIPRは有効な対策手段でなくなるケースもあります。
しかし、一般的に陪審員が特許を無効にする確率が非常に低いことを考えると、PTABにおけるIPR手続きを行い、特許の有効性に対して挑戦する場所を得ることは価値があることかもしれません。
バイオテック/製薬分野では、パープルブック(Purple Book)の変更に基づき、TC1600での申立件数は安定し、増加に転ずると予想しています。2020年12月には、パープルブック継続法(Purple Book Continuity Act)が成立し、FDAは、既存のオレンジブック(Orange Book)と同様に、すべての関連情報が記載され、すべてのライセンスを受けた生物学的製剤を検索できるようにすることが計画されています。
最後にCBMは2020年9月に終了したので、議会が法律を変更してCBMを再び実施することを決定しない限り、CBMの手続きは今後行われることはありません。
参考記事:“PTAB Trends and Predictions: Looking Back at 2020 and Forward to 2021” by Lisa M. Mandrusiak and Christopher Ricciuti. Oblon