機械系の発明でも特許適格性の注意は必要

最近のスーツケースにはどこにでもついているTSAなどがマスターキーで開けられる特殊な航空会社用手荷物に関する特許が、特許適格性を満たしていないとして、無効になるケースがありました。機械系の発明でも重要な部分の開示が十分でないとこのような問題になりかねないので注意が必要です。

ケース:Travel Sentry v. Tropp (Fed. Cir. 2022)

特許は公知の技術の販売方法と使用方法に関する発明

Troppの特許(7,021,537と7,036,728)は、ロック可能な特殊な航空会社用手荷物を対象としています。 基本的に、TSAはロックに入るためのマスターキーを持っています。 しかし、マスターキーを使ったコンビネーションロックの作り方は、すでに知られていました。そこで、  この発明は、錠前の販売方法と使用方法をクレームしたものになりました。クレームされた方法クレームは、以下を要素として含んでいます。

  • コンビネーションロック部分とマスターキーロック部分を持ち、さらに識別子(TSA APPROVEDなど)を持つ、個々の航空会社の荷物に適用するように設計された「特別なロック」(special lock)を提供すること
  • このロックを消費者に販売し、TSAがマスターキーを持っていること
  • 手荷物検査の際、TSAはTSA-APPROVEDの識別子を見て、必要なら提供されたマスターキーを使って手荷物を開ける

‘537特許のクレーム1に関する開示

明細書における開示が不十分で特許適格性が問題に

Travel Sentry社は、TSA認可のロック付き荷物を販売しており、2006年に非侵害の宣言的判決を求めてTropp社を提訴。この訴訟はこれまでずっと係争中でした。しかし最近、連邦地裁は、請求項が「長年の基本的な経済慣行及び人間活動を組織化する方法である、荷物検査のためのデュアルアクセスロックを使用し販売する」という抽象的アイデアに向けられたものであると判断し、これを無効としました。 また、その抽象的なアイデアを超える発明概念はないとも判断しています。つまり、35 U.S.C. § 101の下では特許不適格(patent subject matter inelibigle)と判断されました。

控訴審において、CAFCは、短い非判断的な意見(non-precedential opinion)でこれを支持した。 CAFCにおいて、Troppは特殊なロック(special lock)の基礎となる発明思想を特定していないとされ、特許請求の範囲や明細書には、何が「特別」であるかが記載されておらず、特別なロックに関する具体的な改良点や技術仕様が記載されていないと、CAFCは非難しました。

特許適格性はますます発明的概念と結びついている

今回の地裁やCAFCの判決文を見ると、発明概念の基礎となる具体的な構成要素または物理的要素を記載するよう努めることが重要だと読み取れます。

ソフトウェアやバイオ系の発明とは異なり、「物理的」な製品に向けられたクレームでは、

特許適格性が問題にはならないと思っていると、今回のような思わぬ形で35 U.S.C. § 101が特許権者の不安材料になる可能性もあります。

そのため、機械系の発明であっても、発明的概念の詳しい説明を怠らず、特許適格性がハードルにならないような明細書を作成する必要があるでしょう。

参考文献:Federal Circuit Throws out the Master Key in this Eligibility Case

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

stop-estoppel
再審査
野口 剛史

IPRは一発勝負

Alcatel-Lucent USA Inc. v. Oyster Optics, LLCにおいて、 PTAB は、35 USC § 314(a)による裁量権を考慮し、 IPR 手続きを却下しました。その理由として、 (1) 申立人は同じような理由の IPR 申し立てを以前行っていた、(2) 2回目の申し立ての提出までの遅れの説明ができていなかった、 (3) 2回目の申し立てに含まれていた先行例の存在を1回目に申し立ての際に知っていたという3点を示しました。

Read More »