コロナ禍の一時的な処置から正式な手続きの変更へ:特許期間延長の手続きの電子化

2022年5月6日に、米国特許商標庁(USPTO)は、特許期間延長(patent term extension。PTE)の申請、中間PTE申請、および関連する提出物をUSPTO特許電子出願システム(EFS-Webまたはパテントセンター)を介してUSPTOに電子的に提出することを認めるための実務規則改正を提案しました。

特許期間延長(PTE)は、Hatch-Waxman制度の一部で、特許の対象が販売前にFDAの承認を必要とし、FDAの承認プロセスが特許付与後まで完了しなかった場合に特許期間の延長を規定するものです。35 U.S. Code § 156

コロナ禍の一時的な処置から正式な手続きの変更へ

COVID-19パンデミック以前は、PTE用の初期提出物の電子申請は禁止されていました。しかし、パンデミックによる職場の変化のため、USPTOは一時的にPTEの初期提出物の電子申請の禁止、および37 CFR 1.740(b)と1.790(b)の3部複写の要件を免除しました。それ以来、USPTOは利害関係者から非公式にフィードバックを受け、電子申請に強い支持があることを知りました。

また、USPTOとそのパートナー機関が、USPTOが処理エラーを起こすことなく、PTE提出書類のコピーを関連機関に電子送信できる新システムを導入したことにより、USPTOは、この実施規則を恒久的に変更することを提案しています。

利便性も向上

USPTOは、PTE申請のために特別に提出される限定委任状および/または連絡先住所変更のための「特許期間延長出願の限定委任状および/または住所変更」など、電子提出用の新しい文書説明を作成しました。これらの新しい書類は、PTE申請人がPTE出願の審査に、基礎となる特許とは異なる法律事務所を使用した場合、またはPTE申請人が特許出願人とは異なる事業体である場合に、USPTOによる処理エラーを減らすために用いられます。

データ開示もスムーズに

さらに、2020年6月の電子出願免除が施行されて以来そうであったように、今回の規則変更案では、PTE申請が申請と同時にUSPTOの電子閲覧システム(特許出願情報検索(PAIR)システムまたはパテントセンター)で閲覧できるようになります。これは、企業にとって、より優れた競争情報を得る機会を提供するものです。従来、第三者が関連するPTE出願を閲覧するには、承認後、数週間から数ヶ月待たなければなりませんでしたが、電子出願により、だれでも出願されたPTE申請をリアルタイムで見ることができるようになりました。

制度変更による全体的な利便性の向上に期待

全体として、これらはPTE申請プロセスの改善であり、申請者の管理負担を軽減し、申請プロセスの様々な側面を合理化し、PTE申請書の公開性を向上させるものです。この改正案については一般から意見を集めている段階で、2022年7月5日でそれが終わり、その後、正式な手続き変更が行われます。

参考文献:The USPTO proposes to establish permanent electronic filing for patent term extension applications

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

coca-cola trademark
商標
野口 剛史

商標をつかってブランドを守る

ブランドを守る手段の一つに商標があります。今回は、一般的なビジネスで使用される言葉、フレーズ、ロゴなどついて、どのように商標を使って自社のブランドを守っていくかについてわかりやすく解説していきます。特に、TMシンボルを使うことにおける保護には一切コストがかからず、何も登録する必要がないので、今すぐできる商標活動です。

Read More »
商標
野口 剛史

スタートアップでもインターネット上でのブランドの利用状況を監視しよう!

日本でニセサイトによる詐欺被害がニュースになりましたが、アメリカではスタートアップでもサイバースクワッティングの被害にあってるところもあり、スタートアップでさえもインターネット上でのブランドの利用状況を監視しないと、後で大変なことになる例も出てきています。

Read More »