特許適格性問題の審査を延期できる新しいパイロットプログラムが始まる

1月6日、特許庁は、特許適格性に関する拒絶に対する応答を延期することを出願人に許可するDeferred Subject Matter Eligibility Response Pilot Programを導入しました。このパイロットプログラムを活用することで、発明の新規性・進歩性、記述要件などの問題に特許審査を集中させ、発明が抽象的すぎるか、自然現象を大きく超えていないかなどの曖昧な問題の議論を延期することができるようになります。

詳細はこちらから

特許庁の特設ページ:Deferred Subject Matter Eligibility Response (DSMER) pilot program

このプログラムは、発明が革新的かどうか、適切に説明されているかどうかは、「法律の下で十分に開発された客観的基準に基づいている」のに対し、抽象度などの適格性に関する問題は「本質的に曖昧で主観的」であると指摘されていることに対する特許庁の対応策の1つと言えるでしょう。

また、審査官が適格性の検討を延期することが認められていた場合、「クレームを102条、103条、112条に適合させることにより、審査官は必然的にクレームを101条(適格性)にも適合させる」ため、一般的に適格性拒絶を全く出さないことになることが期待されています。

この新しい試みでは、出願が特許適格性と新規性・進歩性などの他の問題の両方により拒絶された場合、出願人は、他の問題が解決されるか、出願が最終拒絶を受けるまで適格性拒絶の処理を延期するよう促される可能性があります。その時点で、もし特許適格性の問題が残っていれば、出願人は、通常の審査と同じ手段、例えば、審判請求や継続審査請求などを用いて、その問題に対処することができます。

このプログラムは、審査を簡略化する可能性がある一方で、欠点もあります。参加要請を受けた出願人は、特許適格性の問題の処理を延期するかどうかを決定する前に、その具体的な状況を慎重に検討する必要があります。

最良のケースでは、出願人は、適格性拒絶に全く対処することなく特許を取得することができます。しかし、出願人が適格性の処理を延期した場合、審査官が適格性問題についての出願人の議論や補正にどう対応するかを知ることができないまま、最終的な拒絶に直面することもありえます。したがって、潜在的な利点がある一方で、一部の出願人にとっては通常の審査よりも不利になったり、よりコストがかかる状況にもなり得るので、個別案件ごとに現地代理人に相談するのがいいでしょう。

参考文献:New PTO Pilot for Deferring Prosecution of Eligibility Issues

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