診断方法クレームの特許適格性問題

診断方法クレームを作成する際に、自然発生事象を主な対象とした広範なクレームにしてしまうと、特許適格性の問題が発生しやすくなります。そうではなく、実際のアプリケーションに注目し、当業界の慣例にないステップの組み合わせを示した方がいいでしょう。

判例:CareDx, Inc. v. Eurofins Viracor, Inc. 

7月18日、CareDx, Inc. v. Eurofins Viracor, Inc.において、連邦巡回控訴裁(CAFC)は、U.S.特許 8,703,652 (‘652), 9,845,497 (‘497), 10,329,607 (‘607) における臓器移植拒絶反応の検出に 関する診断方法クレームは特許適格性に欠けているとした連邦地裁の判決を維持しました。’652の以下のクレームは、判決で強調された控訴審のクレームを代表するものです:

1. 移植拒絶反応、移植片機能不全、または臓器不全を検出するための方法であって、該方法は:

(a)ドナーから移植を受けた対象から[cfDNA]を含む試料を提供すること

(b)ドナー[cfDNA]を検出するための多型プロファイルを確立するために、ドナー特異的多型の遺伝子型または被験者特異的多型の遺伝子型を得ること、またはドナー特異的多型および被験者特異的多型の両方の遺伝子型を得ること、ここで、遺伝子型がSNPを含む被験者特異的多型を含んでいる場合には少なくとも一つの一塩基多型(SNP)は被験者にとってホモ接合体であること

(c)サンプル中の[cfDNA]のマルチプレックスシークエンスと、それに続く多型プロファイルを用いたシークエンス結果の解析により、ドナー[cfDNA]及び被験者[cfDNA]を検出する工程;及び

(d)多重シークエンスによるドナー[cfDNA]及び被験者[cfDNA]の検出に基づいてドナー[cfDNA]の量を決定することにより、移植を受けた被験者の移植状態又は結果を診断、予測、又はモニタリングするステップで、ドナー[cfDNA]の量の経時的な増加が、移植拒絶、移植片機能不全又は臓器不全を示すものであり、本方法の感度が、心臓移植片血管障害(CAV)に対する現行の監視方法の感度と比較して56%以上である、ことを特徴とする。

1. A method for detecting transplant rejection, graft dysfunction, or organ failure, the method comprising:

(a) providing a sample comprising [cfDNA] from a subject who has received a transplant from a donor;

(b) obtaining a genotype of donor-specific polymorphisms or a genotype of subject- specific polymorphisms, or obtaining both a genotype of donor-specific polymorphisms and subject-specific polymorphisms, to establish a polymorphism profile for detecting donor [cfDNA], wherein at least one single nucleotide polymorphism (SNP) is homozygous for the subject if the genotype comprises subject-specific polymorphisms comprising SNPs;

(c) multiplex sequencing of the [cfDNA] in the sample followed by analysis of the sequencing results using the polymorphism profile to detect donor [cfDNA] and subject [cfDNA]; and

(d) diagnosing, predicting, or monitoring a transplant status or outcome of the subject who has received the transplant by determining a quantity of the donor [cfDNA] based on the detection of the donor [cfDNA] and subject [cfDNA] by the multiplexed sequencing, wherein an increase in the quantity of the donor [cfDNA] over time is indicative of transplant rejection, graft dysfunction or organ failure, and wherein sensitivity of the method is greater than 56% compared to sensitivity of current surveillance methods for cardiac allograft vasculopathy (CAV).

拒絶反応を監視するために細胞遊離DNA(cfDNA)を用いるという概念は、Cardex社の準備書面1ページにあるように、移植後の期間、日常的に投与される抗拒絶反応薬の投与量と投与期間を決定するために知られていたものです。本発明が解決しようとした課題は、抗拒絶反応薬の投与が終了し、移植された臓器が正常に機能するようになった後、移植の状態を非侵襲的に経時的にモニタリングする方法でした。

本発明以前のモニタリングでは、拒絶反応が起きているかどうかを、症状が出る前に判断するために侵襲的な処置が必要でした。臓器提供者のDNAが被移植者の中で増加すれば、臓器拒絶反応のマーカーになることが知られていました。しかし、この方法は、男性から臓器をもらった女性にしか使えません。また、循環DNA中のドナー特異的ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子を検出する方法もありますが、ドナーとレシピエントを区別する能力に限界があるため、実用的ではありませんでした。本発明は、遺伝子型判定により実質的にドナーDNAの指紋を取ることで、血液中のドナーcfDNAの量をモニターすることにより、移植された臓器の状態を簡単な血液検査で確認することを可能にしたものです。

分析を行う技術は以前からあったものであり、それを新しい方法で使用することが発明でした。しかし、強調された請求項の用語からわかるように、請求項は移植臓器を監視する方法ではなく、むしろcfDNAと移植の関係に焦点を当てたものでした。この技術は、特許請求の範囲に記載されていないステップ、特に、少なくとも年に一度、非侵襲的に移植臓器の状態を監視し、ドナーのcfDNAの含有量について分析することで臓器の状態を検出することを含んでいました。前回の分析から濃度が上昇したかどうかに注目することで、症状が出る前に臓器拒絶反応を検出するものです。請求項のステップ(d)は、これを示唆するものですが、これに限定されるものではありません。また、拒絶反応や抗拒絶反応薬の投与を確認するための侵襲的な検査を行うという次のステップも請求項には含まれていません。このようなステップの組み合わせは、当業界の慣例にないものであり、新規なものでした。

参考文献:Cardex – Patent Eligibility – It’s The Claims That Matter

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