数値限定が片方しかされていないクレームの有効性はどのように見られるのか?

112条の実施可能要件(enablement)と記載不備(written discription)の両方が問題視される可能性があります。しかし、上限または下限がクレームに明記されていなくても、その理由だけで「不適切」なクレームとはなりません。

たとえ知られていなくても、固有の上限(または下限)があり、その限界が明細書によって当業者にわかる形で開示されていれば、適切なクレームのサポートがあると解釈されます。

 Ex parte Qiu (Appeal 2020-001512)では、クレームの数値限定されていた部分に上限がないことが問題視されました。

しかし、クレームでは化合物の分子量の上限が要求されていたので(「10,000グラム/モル以下」)、明細書全体では、当業者がクレームの要件に囲まれた特定の化合物のアニオン性基の数の固有の上限を決定することができたとし、適切なクレームのサポートがあると解釈されました。

数値限定が片方しかされていないクレームは、両端が数値限定されているクレームよりも理論的に権利範囲は広くなりますが、その反面、審査官に有効性を疑われます。

その際に明細書の開示内容で、明記されていない限界があることを明細書によって示せればいいのですが、明確なサポートが無い、または曖昧な場合、審査官が納得しない場合があります。そのため、Ex parte Qiuのように審判請求をしなくてもいいように、少なくとも従属クレームにおいて言及していない方の数値限定を明確化することをおすすめします。

参考文献:PTAB Finds Support for An Open-ended Numerical Range

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