2022年12月8日、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、過去の当事者間審査(IPR)手続において、特許審判部(PTAB)が特定の特許クレームを特許不実施(unpatentable)と認定したことにより、別のIPR手続きにおいて、関連特許の類似クレームが担保禁反言(collateral estoppel)に基づき特許不実施となると判断しました。
判例:Google LLC v. Hammond Dev. Int’l, Inc., No. 2021-2218 (Fed. Cir. Dec. 8, 2022)
別特許のIPRの結果が関連特許のIPRにおける自明判断の理由に
Googleは、Hammondの米国特許第10,270,816号(「’816特許」)の全クレームについてIPRを申請しました。2021年6月4日、審査委員会は、クレーム1-13および20-30のみが自明と判断しました。Googleは、以前、Hammondの米国特許第9,264,483号(以下、「’483特許」)のIPRも申請していました。’816特許と’483特許は関連性があり、同じ明細書を共有しています。2021年4月12日、PTABは、‘483特許の全ての異議申立クレームは、’816特許のIPRと同じ先行技術の組み合わせに基づき自明であったと決定する最終書面決定を下しました。
Googleは、’483特許のクレーム18が特許不成立であるとするPTABの決定により、’816特許のクレーム18が付随禁反言に基づき特許不成立になると主張して、’816特許のクレーム14~19が特許不成立でないというPTABの決定に不服申し立てを行っていました。
担保禁反言(collateral estoppel)の要素
担保禁反言(collateral estoppel)を主張するにあたって、申立人は以下の4つの要素を示す必要があります:
(1) 当該問題が最初の手続きで決定されたものと同一であること、
(2) 当該問題が最初の手続きで実際に争われたこと、
(3) 当該問題の解決が最初の手続きにおける最終判決に不可欠であったこと、そして
(4) 当該当事者には最初の手続きで当該問題を争う十分かつ公正な機会が与えられていたこと。
In re Freeman, 30 F.3d 1459, 1465 (Fed. Cir. 1994)
クレームの一致よりも特許性の争点の一致が重要になる
今回の事件では、最初の要件のみが争点となりました。
まず担保禁反言は、特許クレームが同一であることよりも、特許性の争点が同一であることが求められます。従って、特許請求の範囲の文言が若干異なっていても、その違いが無効の問題を大きく変えない限り、担保禁反言は適用される可能性があります。
無効とされた’483特許のクレーム18は、「1つ以上のアプリケーションサーバー」での特定の活動を要求し、’816特許のクレーム18は、2つのアプリケーションサーバー間で活動を分担していいました。 PTABは、この違いは無効性の問題を大きく変えるものではないと判断し、当業者であれば、先行技術文献であるGilmoreの各アプリケーションを別々のサーバーでホストすることは自明であると判断したであろうというGoogleの専門家証言を信用しました。PTABは、「複数のサーバーにソフトウェアアプリケーションを分散させることは、当業者によく知られていた」と説明していました。
従って、CAFCは、’483特許のクレーム18と’816特許のクレーム18の特許性の問題は同一であると判断し、担保禁反言(collateral estoppel)が適用されると判断しました。