小数点以下の数字が示すクレーム範囲はintrinsic evidenceに大きく影響される

米国連邦巡回控訴裁(CAFC)は、誤ったクレーム解釈に基づく侵害訴訟の判決を取り消し、争点となっている用語の平易で通常の意味(plain and ordinary meaning)を判断する際に、内在する証拠(intrinsic evidence)からクレーム文言を切り離すことは不適切であると説明しました。

判例:AstraZeneca AB v. Mylan Pharms. Inc., Case No. 21-1729 (Fed. Cir. Dec. 8, 2021) (Stoll, J.) (Taranto, J., dissenting) 

訴訟までの経緯

AstraZenecaは、喘息およびCOPD治療用のSymbicort®加圧式定量吸入器をカバーする米国食品医薬品局(FDA)のオレンジブックに記載されている3つの特許の侵害でMylan製薬を提訴。3Mは、Symbicort®吸入器の後発品を製造・販売するためにFDAに簡略化新薬承認申請(abbreviated new drug application:ANDA)を行い、その後ANDAに関する一部の権利をMylanに移管しました。MylanからパラグラフIVレターを受け取った後、AstraZenecaは侵害訴訟を提起しました。

クレーム解釈における数字表記の問題

裁判の直前、連邦地方裁判所は、有効成分の一つであるPVPのクレーム濃度である「0.001%」の意味を判断するため、クレームコンストラクションヒアリングを行いました。連邦地裁は、この用語を「平易かつ通常の意味(plain and ordinary meaning)、すなわち、有効数字1桁で表現されたもの」に基づいて解釈しました。この定義に基づき、Mylanは侵害を認め、連邦地裁は判決を下しました。また、連邦地裁は特許の有効性に関する公開裁判を行い、最終的にMylanはクレームが自明で無効であることを証明しなかったと判断。この結果を不服とし、Mylanは、クレーム構成決定に起因する判決及び特許有効とする判決を控訴しました。

まず、控訴されたCAFCにおいて、Mylanは連邦地裁が行った「0.001%」のクレーム解釈に異議を唱えました。AstraZenecaは、連邦地裁がこの用語を0.0005%から0.0014%の範囲を包含するよう不適切に解釈したと主張。それに対し、Mylanは、明細書および出願経過に照らして、用語は0.001%で正確に定義されるべきであり、「わずかな変動」しか認められないと主張しました。CAFCはこれに同意し、Mylanの提案する解釈の方が、出願経過に基づく特許明細書の記述とより適切に一致すると判断しました。

CAFCは、0.001%の適切な解釈は、0.00095%から0.00104%までのわずかな変動を認めるだけであると述べました。0.001%という用語が、通常、0.0005%から0.0014%の範囲を包含していることに異論はありませんでした。AstraZenecaは、辞書や免責事項がなければ、この「通常の意味」が支配的であると主張。しかし、CAFCは、この用語がクレーム文、明細書、特許審査履歴から不適切に切り離されると判断し、これに同意しませんでした。

同裁判所は、「通常の意味」(ordinary meaning)とは、抽象的な通常の意味ではなく、「特許全体を読んだ後の通常の当業者にとっての意味」(meaning to the ordinary artisan after reading the entire patent)であり、したがって、クレームは、記述と審査経過の両方を考慮して読まなければならないと説明。狭義解釈の根拠は、明細書と審査履歴が、PVP濃度のごくわずかな違いが安定性に影響を与えることを示すという内在的記録に基づくものであるとしました。

CAFCは、明細書において、安定性が最も重要な要素の1つであり、PVP濃度のごくわずかな違いも安定性に影響を与える可能性があると説明していると判断。また、明細書には、PVP濃度が0.001%の場合、一貫して安定であることが判明したと記されてもいました。このように、わずかな濃度の違いも安定性に影響するという証拠が記述されていることから、0.001%という濃度は、より正確であることを意図していることが記述からうかがわれました。

また、裁判所は、発明者が複数の変更を通じて、クレームされたPVPの濃度を「約0.0005〜約0.05 %w/w」から「0.001%」に狭め、「約」という用語を削除し、クレーム範囲を狭めていることにも言及。裁判所は、これらの変更が狭義の解釈を支持すると述べました。その結果、同裁判所は、地裁による侵害の判決を取り消し、新しい定義に基づく侵害の判断を行うよう地裁に差し戻しました。

CAFCにおいて、Mylanは、非自明性の判断から得られたいくつかの事実認定についても異議を唱えました。しかし、CAFCは、明確な誤りはないと判断し、連邦地裁の非自明性の判断を支持しました。

参考文献:Rounding Error: Intrinsic Evidence Informs Plain and Ordinary Meaning

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