NPEが銀行や金融機関を特許訴訟の対象とするケースが増加中

銀行や金融機関が特許訴訟の対象となることは以前からありましたが、今年に入ってからは、多くの不実施主体(NPE;Non-Practicing Entity)の標的となっていることがわかりました。メーカーのように知財部がない銀行や金融機関が特許訴訟に巻き込まれると、適切な対応ができない場合があります。そこで、事前に信頼できる特許訴訟弁護士などを見つけておいてスムーズに対応できる準備をしておいたほうがいいでしょう。

NPEとは?

NPEとは、(買い入れなどで)特許を取得したものの、実際には特許発明を実施していない企業のことです。一般的には「パテント・トロール」とも呼ばれています。11月初旬に相次いで訴訟を起こしたこのような企業の1つであるAuth Token LLCは、銀行や金融機関に対する特許キャンペーンを続けています。

Auth Tokenとは?

Auth Tokenは、ニューヨークに本拠を置くデラウェア州のLLCで、米国特許第8,375,212号同第8,688,990号の2つの特許(いずれも「認証トークンをパーソナライズする方法」)を主張しています。しかし、米国特許商標庁(USPTO)の記録によると、この特許はPrism Technologies LLCが特許権者です。通常の慣習として、特許が譲渡された場合、USPTOでその事実を記録するのですが、必須ではないので、Auth Tokenはその手続をしてないだけなのかもしれません。しかし、譲渡が記録されていないということは、Auth Tokenが特許訴訟を起こす権利を持っているかがわからないということなので、この特許の所有権の問題は訴訟で争われるかもしれません。

Auth Tokenの特許には、組織が顧客に発行するスマートカードを使用した認証トークンが記載されています。スマートカードは、ユーザーの入力に反応してワンタイムパスワードを出力するソフトウェアアプリケーションを実行するプロセッサを備えています。2021年、Auth Token社は21件の訴訟でこの特許を主張しています。最近のターゲットは、2021年11月初旬に提訴されたばかりのものも含めて、American Expressなどの銀行やその他の金融機関です。特に、Auth TokenはEMVカードに対する侵害を主張しているようですが、EMVとは "Europay, Mastercard, Visa "の頭文字をとったもので、技術規格に基づいた決済方法です。これは、現在多くの消費者が利用している「チップカード」のことで、クレジットカードをスワイプする代わりにカードリーダーに挿入します。

ほとんどの訴訟はごく最近提起されたもので、多くの被告はまだ回答していません。しかし、注目すべきは、ある被告が10月末に、これらの特許が101条に基づいて特許として不適格であると主張して、早期の判決を求める申し立てを行ったことです。§101はアメリカで特許を受けることができる発明の種類を大幅に制限する法律で、このようなソフトウェアが関わる発明の有効性を問うときに使われることが多いです。

銀行・金融機関への影響

まだ今回の§101の申し立てが裁判所で支持され、認められるかどうかはまだわかりません。また、Auth Token社が、申し立てに関する判決がデラウェア地区で出されるのを避けるために、被告と迅速に和解しようとする可能性もあります。しかし、それまでの間、アメリカでEMVカードを発行している銀行や金融機関であれば、Auth Tokenがターゲットとして訴訟を起こすかもしれません。

日本の銀行や金融機関がEMVカードを伴うようなサービスをアメリカで展開していることはなさそうですが、金融機関だからと言って、アメリカでは特許侵害訴訟とは無関係ではないことが今回の記事からわかると思います。特許に不慣れなままアメリカの特許訴訟に巻き込まれると大変なことになるので、アメリカでの特許訴訟が心配な場合は、事前に信頼できる特許訴訟弁護士を見つけておくと良いでしょう。

参考記事:Non-practicing entities increasingly are targeting banks and financial institutions in patent litigation

追加記事

特許において、クレームの限定事項が明確に記述されているかどうかは、特許の有効性を左右する重要な要素です。今回、Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limitedの判決は、特許クレームの解釈において、限定事項間の表面上の矛盾をどのように扱うべきかという問題を浮き彫りにしました。本文では、この重要な判決を深堀りし、一見矛盾すると思われる限定事項が、実際には特許の不明瞭性(Indefiniteness)を生じさせない理由について探求します。特に、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)がどのようにこれらの限定事項を同時に満たすことが可能であると見做したか、その解釈の根拠と、特許クレームを起草する際の実務上の教訓に焦点を当てて考察します。
特許法における「組み合わせの動機」(Motivation to Combin)の概念は、発明が発明された時点でその分野の通常の技術者(PHOSITA)にとって自明であったかどうかを判断する上で不可欠な要素です。自明性の問題は、新しい発明が既知の技術要素の単純な組み合わせに過ぎないのか、それとも特許に値する独自の技術的進歩を表しているのかを区別するために重要です。このブログ記事では、特許請求の自明性を評価する際に中心となる「組み合わせの動機」の概念と最高裁判決であるKSR判例を解説し、Virtek Vision 対 Assembly Guidance Systemsの事件を例に、実際の訴訟におけるこの概念の適用方法について掘り下げます。
先月、米国特許商標庁(USPTO)が「Means-Plus-Function」に関するメモランダムを発行し、審査官に最新ガイダンスを提供しました。その内容は実務における大きな変更を意味するものではなく、既存の法的枠組みの下でより明確な指針を提供することを目的としています。しかし、このタイミングにおけるガイドラインの発行は、35U.S.C.112条(f)に基づく一風変わったクレームの形式であるMeans-Plus-FunctionがUSPTOにおける特許審査で注目されていることを示しており、改めてガイドラインに沿った適切なクレームドラフティングが求められることを意味します。