NPE組織の分析- Cedar Lane Technologies

NPEショーケースの第1回目として、大量の特許を保有するnon-practicing entities(または「パテント・トロール」)について紹介します。今回は、Cedar Lane Technologiesという会社と、彼らの最近の特許権行使の取り組みに焦点を当てます。

Cedar Lane は、特許権行使市場において、たくさんいるNPEの一つです。カナダの企業であるCedar Lane は、2019年に法人化し、様々な特許の侵害を理由に数百の被告を訴えるようになりました。彼らの最近の権利行使活動により、9月12日の週だけで16件の訴訟がテキサス州西部地区内で行われ、すべてRabicoff LawのIsaac Rabicoffが担当しています。Cedar Laneは主にIntellectual Ventures社が元々所有していた特許を主張しています。

Cedar Laneが多くの訴訟を起こすことができるのは、彼らの特許が扱う技術が多岐にわたることが理由の1つにあります。彼らの特許ポートフォリオには、画像処理方法に関するもの、遠隔操作に関するもの、さらには標準的な圧縮技術に関するものと様々です。また、多種に渡る機器に対して主張できるほど広い(曖昧な)クレーム範囲の特許をもっており、多くの企業を訴訟対象にすることができます。Cedar Lane としては、携帯電話で電気機器を操作すれば、あるいは画像を重ね合わせてパノラマ写真を作れば、あるいはJPEG圧縮技術を使えば、その会社は特許を侵害しているという見解のようです。

しかし、Cedar Laneは特許の権利行使にすべて成功しているわけではありません。例えば、カリフォルニア州北部地区のVince Chhabria判事は、2020年の判決において、Cedar LaneとRabicoff氏の両者に対して「客観的に見て軽薄であり…不誠実に行った 」という理由で制裁を加えました。また、裁判所は、Rabicoff氏が「カリフォルニア州北部地区で特許訴訟を起こし続けているが、この地区での弁護士資格はない」「この訴訟の手続き上の経緯について誤解を招く発言をした」と指摘しました。その後、Rabicoff氏は、カリフォルニア州北部地区の職業上の行動に関する常任委員会に、さらなる調査の実施を命じられました。その決定については、こちらを見てください。

他にもCedar Lane にターゲットにされるかもしれない企業にとって良いニュースもあります。Cedar Laneは、弁論段階にとどまらず、訴訟を長引かせることにあまり意欲的でないようです。現在のところどの訴訟も裁判の段階には至っていません。その代わりに、訴訟キャンペーンは従来の特許に基づく迷惑訴訟であり、最終的に原告のためになる控えめな和解を大量に生み出すように設計されているようです。

参考記事:NPE Showcase – Cedar Lane Technologies

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

statistics-stack-of-documents
商標
野口 剛史

効率化のやりすぎは問題?商標出願の件数が多すぎてUSPTOに業務停止処分を言い渡される

米国特許商標庁(USPTO)は、今年初め、短期間に考えられないほどの大量の商標出願を行ったとしてニューヨークのWeibo Zhang弁護士に対して業務停止処分を下しました。より短時間で質の高い業務をおこなうようにすることは大切ですが、代理人業務を提供し、相談することを怠ったり、無許可の法律業務を支援していたと見なされると問題になるので、業務効率しても弁護士が十分なサービスを提供できる仕組みが大切になってきます。

Read More »
再審査
野口 剛史

特許庁長官によるIPRに関する指示の発行手続きは裁判所で再審議可能(しかしその内容自体は再審議不可)

米国連邦巡回控訴裁判所は、米国特許庁長官の指示の内容は審査できないとしたが、指示を発行するために使用された手続きについては審査可能であると判断しました。その理由は、指示の手続きと内容は「完全に異なる」もののため、内容に関しては法律で裁判所における再審査が不可とされているものの、指示を発表するために長官が使用した手続きは審査可能であると結論づけました。

Read More »