連邦巡回控訴裁判所 (CAFC) の第9席はオバマ大統領が任命したEvan Wallach判事ですが、この度”senior”ステータスとなることが決まりました。正式な変更は、2021年5月31日に正式に行われるとのことです。”Senior”ステータスとは簡単に言うとその連邦判事がセミリタイヤするということなので、今回の決定によりCAFCの席が1つ空席になります。この空席を埋めるためジョー・バイデン大統領は、次のをCAFC判事を指名することになります。
CAFC判事の人事はあまり政治的な影響を受けない?
CAFCの判事で最も新しく決まったのが、Kara Fernandez Stoll判事で2015年と6年も遡ります。意外にも連邦判事を任命し続けていたドナルド・トランプ大統領(任期は2017年から2021年)には、連邦巡回区の判事を任命する機会が与えられませんでした。
しかし、連邦巡回控訴裁判所判事への任命は、政治的な人事とは言い難いものです。例えば、Kara Fernandez Stoll判事は、米国の上院で95対0で承認されました。
特許を扱うCAFCというユニークは裁判所
CAFCの任命が政治的でないと思われているのは、技術的資格が裁判官の任命において法律的資格と同様に重要であることに由来しています。
2012年にアメリカ発明法(AIA)が施行されて以来、連邦巡回控訴裁判所における特許控訴件数は、1980年代には全体の訴訟件数の約3分の1程度でしたが、現在では約3分の2を占めるまでになっています。そのため、連邦巡回控訴裁判所の判事の多くは、科学や工学などの技術的なバックグラウンドを持っています。例えば、Kara Fernandez Stoll判事や、オバマ大統領が任命した Raymond Chen判事は、ともに電気工学の学位を持っています。
CAFC判事は民主党寄り?
このようにあまり政治的な問題が人事に影響されないというものの、政治的な背景で見るなら、民主党の大統領は、現在の連邦巡回区の判事11の内7人を任命しています。共和党の大統領は、わずか4名の任命にとどまっています。ジョー・バイデン大統領が8人目(12人中)を任命した後は、裁判所の最年少裁判官のうち7人が民主党の大統領によって任命されることになります。
次のCAFCは誰だ?
知財に関わる人間としては、やはり次のCAFC判事が誰になるのかは気になるところです。最高裁判事を選ぶときには一般メディアでも大きく取り上げられましたが、CAFC判事の人事は政治的な背景が少ないのであまり一般のメディアでは扱われないかもしれません。
しかし、特許適格性の問題や、AI発明の取り扱い、医療診断の権利化、SEPの取り扱いなど、CAFCが取り扱わなければいけない特許の問題は多岐に渡り、CAFCの判決が知財業界に与える影響はとても大きいです。
そのためにも、新しいCAFC判事にどのような人が選ばれ、どのような判決を下していくのかはフォローしておきたいテーマの1つです。
参考文献:”Federal Circuit Judge Evan Wallach Taking Senior Status” by Gregory “Lars” Gunnerson. McKee Voorhees & Sease PLC