Preamble(前文)の文言がクレーム範囲を制限するのか?この問題は訴訟で争われるほど難しい問題ですが、特に方法クレームの場合、方法「そのもの」よりも「何をするのか」が重要になってくるので、Preambleがクレームの範囲を限定すると解釈されやすい。そのため、先行文献が無効化したい特許でクレームされている方法を開示していても、目的が違う場合、自明性を示すのが難しい。
判例:ELI LILLY AND COMPANY v. TEVA PHARMACEUTICALS
装置または組成物の使用方法に関するクレームでは、Preamble(前文)での意図された目的の記述が限定的と解釈される傾向があります。
Lilly社は、片頭痛を緩和する方法に関するTeva社の特許3件に対してIPRを申請しました。
しかし、PTAB審査会は、Lilly社が、異議申し立てされたクレームが主張された文献に対して自明であったことを証明できなかったと結論付けます。審査会は、Lilly社が先行技術がクレームのすべての要素を開示していること、そして、先行技術を組み合わせる動機を示していることを認めたが、当業者が先行技術を組み合わせることで成功するという合理的な期待を持っていたことを示していないとしたとして、クレームは無効になりませんでした。その後、Lilly社は控訴します。
控訴に際してLilly社は、目的の記述のみを含むPreamble (前文)は法律上クレームの限定とはなり得ないため、Tevaの前文が限定的であるとする審査会の判断は誤っていたと主張。
しかし、CAFCはこれに同意しませんでした。その理由は、装置や組成物のクレームとは異なり、装置や組成物を使用する方法のクレームは、その方法が「何であるか」に向けられたものではなく、通常はその方法が「何をするか」に完全に依存していると説明し、通常、「何をするか」は前文に記載されるので、装置や組成物を使用する方法に意図された目的が記載されている場合、そのような前文の言葉が限定的であるという結論になる傾向があるとしました。
参考文献:The Obviousness of Preamble Limitations Can Be a Real Headache for Patent Challengers