メタバース特許を取得する上でのポイント

メタバース特許といっても基本「ソフトウェア特許」の一部なので、特許庁における審査のポイントは他のソフトウェア特許の審査とあまりかわりません。つまり、ソフトウェア特許の権利化に慣れているのであれば、メタバース特許の権利化でも応用できる点はたくさんあります。今回はそのことを考慮した上で、メタバース特許を取得する上で大切なポイントを紹介します。

最近はメタバースが注目されており、数多くの企業がメタバースで使用するためのイノベーションを開発し、この知的財産を保護するために特許出願を進めています。この分野における特許調査によると、特定の企業はブームになるかなり前、1980年代半からすでにメタバース関連の出願をしているとのことです。出願人にとって、メタバースイノベーションに関する強固なポートフォリオを今から構築しておくことは、この分野の技術が発展し続ける中で、これらの重要な資産を確実に保護するのに役立ちます。

そこで、今回はメタバース特許を取得する上で大切なポイントを紹介します。

どのような技術革新が特許保護の対象となるのか?

一般に、メタバース環境に関連するハードウェア コンポーネントと、メタバース環境内で実行されるソフトウェア プロセスの両方について、特許を申請することが可能です。例示的なハードウェア イノベーションには、メタバース環境をホストまたはサポートするように構成された改良型 CPU および GPU が含まれますが、これらに限定されるものではありません。ハードウェア革新は、拡張現実ヘッドセット(例えば、VR, AR, XR)などのメタバース環境にアクセスするための物理デバイスをさらに含んでもよいです。ソフトウェア革新は、メタバース環境で実行されるプロセス、メタバース環境にアクセスするためのプロセス、およびメタバース環境の状態を同期させるためのプロセスを含み得ます。

主題適格性(subject matter eligibility)のあり方

コンピュータに実装された発明を保護しようとする場合、ハードルの高い適格性を克服する必要があります。米国では、新規かつ有用なプロセス、機械、製造、組成物、またはそれらの新規かつ有用な改良に関する発明を特許の保護対象としています。

メタバース環境に根ざした発明を含むソフトウェアベースの発明については、その適格性の状況は常に進化しています。米国特許庁の2019年特許適格性ガイダンスの発表により、適格性のハードルを克服するためのハードルが下がりました。現在、審査官は、人間の活動を組織化する特定の方法、精神的プロセス、および数学的概念を含む主題グループに対して有利な「抽象的アイデア」を構成するものを広く解釈する能力に制限を受けています。

メタバース型技術革新の適格性を評価する際の一つの考慮点は、その革新的なプロセスがメタバース型でない同等のものを有しているか否かを判断することです。伝統的に、ソフトウェアベースのイノベーションについては、裁判所や審査官にとって、クレームされたプロセスが単にコンピューティング環境に限定された手動または精神的プロセスであるかどうかが1つの検討事項とされています。この原則は、メタバース環境にも拡張できると想像できます。しかしながら、クレームされたプロセスがコンピューティング環境に限定された手動的又は精神的プロセスであるか否かを単に考慮するのではなく、裁判所及び審査官は、メタバース環境において実行されるプロセスがメタバース環境外の同一又は類似のプロセスと同等であるか否かについて、クレームをさらに評価することが可能であると思われます。

このような検討は、ブロックチェーンや人工知能の発明を特許保護対象として評価する際に用いられるものと同様と考えることができるでしょう。出願人にとって、従来のコンピューティング環境において同じように実行されるプロセスをメタバース環境において実装するだけでは、特許査定を得るには困難な戦いとなる可能性があります。

新規性/非自明性:何がユニークか?

メタバースベースの発明の新規性/非自明性の評価は、主題適格性評価とは別の問題ですが、両要素は類似の検討事項に依存しています。

メタバースイノベーションの新規性/非自明性の評価におけるより大きな考慮点の1つは、メタバース環境内のプロセスが、メタバース環境外の同じプロセスと類似しているか否かを判断することです。例えば、提案された発明と先行技術との違いが、提案された発明がメタバース環境に限定されていることだけである場合、出願人が先行技術をクリアすることは困難である可能性があります。

そのため、メタバース環境での実行に特化したプロセスのそのステップを特定することが、出願人にとって賢明でしょう。言い換えれば、提案された発明は、コンピューティング環境の変化(例えば、メタバース環境対非メタバース環境)を考慮して実行されるステップまたは一連のステップを含むか?このステップまたは一連のステップに関する詳細は、そのような文献をクリアまたは克服するために頼りにされることになります。もちろん、クレームされたプロセスやハードウェア装置が、メタバース環境以外でも完全に新規であったり、非自明であったりする場合は、問題のある技術に遭遇するリスクは低くなります。

ソフトウェア特許を取得する手段とあまり変わらない

メタバースは、特許保護を得るために、出願人や実務者に独自の課題を突きつけることは間違いないでしょう。しかし、メタバースといっても大きな枠組みではソフトウェア特許なので、すでにソフトウェア特許に携わっている代理人にとって、主題適格性や新規制・非自明性についてメタバースだからといって全く異なるアプローチを取る必要はないと思います。

当然、メタバースに関わる点で新たな主張や拒絶理由は予測されますが、これらは他のソフトウェア特許であるブロックチェーンイノベーションや人工知能イノベーションに関わる特許取得のための同じ原則やベストプラクティスをメタバースイノベーションに適用することで、うまく対処できると思われます。

今後はメタバース関連の出願数も増えてくると思うので、もし技術的に対応可能であれば、当たらなビジネスチャンスとしてメタバースイノベーションの特許出願を代理する業務も考えてみてはどうでしょうか?

参考記事:Enter the metaverse: Seeking patent protection for metaverse innovations

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