CareDx, Inc. v. Natera, Inc, において、連邦巡回控訴裁(CAFC)は、連邦地裁の判決を支持し、CareDxの臓器移植拒絶反応の検出方法に関する特許クレームは、 35 U.S.C. § 101に基づき特許不適格として無効であるとしました。CAFCは、特許クレームは「自然法則とその法則の発現を検出または定量化する従来の手 法に関する」特許であり、「従来の」技術のみを記載しているという特許自身の「自明」に基づいていると判断しました。
判例:CareDx, Inc. v. Natera, Inc,
背景
Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc.及びAlice Corp. v. CLS Bank Int’l における最高裁判決後の数年間、医療診断分野において、35 U.S.C. § 101に基づく特許クレームの特許適格性(patent subject matter eligibility)は、多くの訴訟の対象となっています。ステップ1では、クレームが自然法則又は自然現象を対象としているか否かを判断します。自然現象に「従来の」ステップを追加するだけでは、クレームは特許性を有しません。
ここで、スタンフォードは米国特許第8,703,652号、第9,845,497号、第10,329,607号(「対象特許」)の所有者で、これらはすべて「臓器移植患者における移植片拒絶反応の非侵襲的診断」というタイトルで、同じ明細書を共有しています。クレームされた診断方法は、ドナーの無細胞DNA(「cfDNA」)を検出することを含みます。「臓器移植が拒絶された場合、レシピエントの体は、その自然免疫反応によってドナー細胞を破壊し、その結果、ドナー臓器の死にかけた細胞からcfDNAが血液中に放出されます。スタンフォード大学は、本特許をCareDx, Inc.にライセンス供与し、臓器移植の拒絶反応の可能性を診断しています。
連邦地裁による略式裁判
CareDxは、Natera, Inc.(以下「Natera」)及びEurofins Viracor, Inc.(以下「Eurofins」)を対象特許の侵害で訴えました。 CareDxは、以下のステップを含む方法クレームを主張しました。
- cfDNAを含むレシピエントからの試料を「入手する」こと
- 多型又はSNPプロファイルを作成するために移植ドナー及び/又はレシピエントを「遺伝子型判定」すること
- マルチプレックスまたはハイスループットシーケンスを用いて試料からのcfDNAを「配列決定」すること;またはデジタルPCRを行うこと;および
- サンプル中のドナーcfDNAの量を「決定すること」。
連邦地裁は、35 U.S.C. § 101に基づき、Natera社とEurofins社を支持し、無効の略式判決を下しました。連邦地裁は、CareDx社の「主張するクレームは、自然現象の検出、具体的には、移植患者におけるドナーcfDNAの存在及びドナーcfDNAと移植拒絶反応との相関に向けられたものである」と判示しました。Mayo ステップ2の分析にとって重要なのは、連邦地裁が、明細書の多くの部分で認めているように」「クレームは従来の技術のみを記載している」と指摘しました。
CAFCはこれを支持
控訴審においてCareDxは、「クレームされた進歩は測定方法の改良」であり、「連邦地裁は、 ステップ1はステップ2と本質的に同じであり、従来技術を中心とすると結論付けたため、ステップ1分析 を適切に行わなかった」 と主張しました。しかし、CAFCは、主張されたクレームは101条に基づき不適格であるとし、略式判決を支持しました。CAFCは、クレームが自然法則を対象とし、「その法則の顕在化を検出または定量化する従来の手順」を採用していることに同意しました。
Alice/Mayoステップ1の下で、CAFCは「これは、調製方法や新しい測定技術に関わる事件ではない」と説明しました。クレームされた方法で言及されている技術は、「自然現象-ドナーのcfDNAのレベルと臓器移植拒絶の可能性-を検出するための従来の測定技術」であり、従来技術の照会は、「連邦地裁が認識しているように、我々はステップ1でも慣用性の分析を繰り返してきた」とコメントし、 Alice/Mayoステップ2に限定されないことを明らかにしました。さらにCAFCは、「この2つの段階は重複した精査を含む」こと説明し、「いつステップ1から2へと分析を進めるべきかについて、境目が明確ではない」としました。
次に、Alice/Mayoのステップ2に基づき、CAFCは、「CareDxの主張するクレームは、自然現象に対して高い一般性で指定された従来のステップを単に付加した検出方法を記載しているだけであるため、 ステップ2において何の進歩性もない」としました 。CAFCは連邦地裁と同様に、記載されたステップの各方法は当業者によって既に実施 されており、クレームのステップの組み合わせは何の進歩性を持たない 、と判断しました。
クレームや明細書次第ではまだ有効
医療診断のクレームは、ユニークな課題に直面しています。従来技術を用いた場合、裁判所は101条に基づき無効と判断する傾向が続いています。このような傾向にもかかわらず、Mayoに続いて医療診断の発明を有効なクレームとして認識するケースもあります。例えば、Illumina, Inc. v. Ariosa Diagnostics, Inc.において、CAFCは、サンプル調製方法をMayoのステップ1に基づき特許適格とし、「クレームは(自然)現象に向けたものではなく、それを利用した特許適格な方法に向けたもの」と結論付けました。
CareDxから得られる特許実務上の教訓は、クレームされた発明に使用される技術を「従来通り」と記述することを避けることであり、たとえそのような記述がクレームの実施可能性を裏付けるものであったとしても、避けることが必要なのかもしれません。
さらに、出願人は、検出の方法をクレームする代わりに、Illuminaで問題となったクレームのようなサンプル調製の方法のようなクレーム形態を考慮すべきでしょう。CareDxで問題となったStanfordの特許は、Mayo判決以前に出願されたものであることも考慮する価値があるでしょう。