ソフトウェア特許のクレームがmeans-plus-functionと解釈されて無効になる

特許のクレームがmeans-plus-functionと解釈されると、明細書内の関連する記述に十分な構造的なサポートがないと、クレームが無効になる可能性があります。特に、ソフトウェア特許のクレームの明細書内に十分な構造に関する記述がない場合があるので、クレームはmeans-plus-functionと解釈さらないように書く必要があります。

判例:Rain Computing, Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd.

問題になった特許では、「ユーザーの要求に基づいてネットワーク上のクライアント端末にソフトウェア・アプリケーション・パッケージを配信する」ことがクレームの対象となっており、様々な機能を実行するように構成された「ユーザー識別モジュール」を送信することが記載されていました。

裁判所は訴訟になったクレームが、means-plus-functionであるかを判断するにあたり、まず、「ユーザー識別モジュール」という文言に注目。この「モジュール」という用語は、「means」という言葉同様に、構造を示すものではなく、特許請求の範囲と明細書の両方に関連する構造が付与されておらず、一般的に理解されている用語の意味がなかったとしました。 そのためい、裁判所は「ユーザー識別モジュール」という文言がmeans-plus-functionを示す用語であると断定。

そのため、「ユーザー識別モジュール」を含むクレームはmeans-plus-functionであるため、機能的で、明細書における構造のサポートが必要になります。

しかし、開示されている内容は、「コンピュータ読み取り可能な媒体または記憶装置」としか書かれておらず、クレームされた機能を実行するために必要な特定のアルゴリズムも記載されていない。よって、十分な構造を提供してはいないと結論づけたため、クレームが無効になりました。

参考文献:Failing to Adequately Support a Means-Plus-Function Claim Term Renders a Claim Invalid

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