知財紛争における訴訟ファイナンスの影響

知財に関する訴訟をおこす企業にとって、訴訟ファイナンスは新しい可能性を提案します。アメリカにおける知財の争いは、多額の賠償金につながることもありますが、その一方で、訴訟費用は高く、解決までに何年もかかり、結果が不確実な場合もあります。

そこで、訴訟に関する資金調達を行うことで、企業はビジネス目標を犠牲にすることなく、貴重な知的財産権を行使することが可能になります。訴訟資金提供者と協力することで、企業は、リソース不足のために見送らざるを得なかった知財侵害ケースや訴訟のポートフォリオを追求することができます。

今回取り上げたこの記事元のオムニブリッジウェイも、訴訟ファイナンスを提供する会社の1つで、長年にわたり、勝つ可能性が高いメリットのあるIPケースに資金提供をしてきたとのことです。

最近の訴訟傾向

最近の傾向として、知財に関する訴訟の賠償金は増加傾向にあります。11月にブルームバーグが報じたところによると、2020年は「現代の特許訴訟の歴史の中で、高額な判決が相次いでいた」とのことで、1億ドルを超える判決がいくつかあり、10億ドル以上の判決もいくつかあったようです。

同様に、大きな企業秘密訴訟では、判決が9桁に達することが日常的になっています。特に営業秘密の不正利用訴訟に関しては、2016年に制定された連邦のDefend Trade Secrets Actにより、州裁判所から連邦裁判所に移行してきているので、この変化が賠償金の増加に影響していることが考えられます。

訴訟資金提供者による査定

訴訟でよい結果を得るには、成功する可能性が最も高い請求の種類を深く理解する必要があります。このような訴訟の戦略はとても重要な部分ですが、資金提供者による査定が大きなヒントになる可能性もあります。

それは資金提供者がケースを投資機会として捉え、資金提供を行う前に広範なデューデリジェンスを行うからです。このプロセスには、請求者、その役員、取締役、および社内弁護士に、請求と会社の法的戦略について冷静な第三者の視点を与えるという利点があります。このように、訴訟資金調達のプロセスは、企業が自分たちの戦略や紛争の長所と短所を確認する機会となります。

野口のコメント

知財訴訟はとてもお金がかかります。訴訟に踏み切る場合、訴訟コストのコントロールも大切ですが、高くても優秀で経験豊富な訴訟弁護士を雇うことも大切です。

訴訟ファイナンスを提供する会社はただ単に資金を提供するだけでなく、その前にちゃんと査定をするので、その時に訴訟における重要なポイントがわかる可能性もあります。まだ、訴訟資金提供という考えは比較的新しいものなので、ベンダーは慎重に選ばないといけないですが、訴訟を行う上での1つの可能性として考えておくべきでしょう

参考文献:Learning how litigation finance can make the difference in IP disputes

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