特許の再発行でITC調査が終了

特許の再発行(reissue)は、発行されて後にクレームが変えられるという便利な側面があるものの、再発行と同時にオリジナル特許のクレームがすべて放棄されます。そのためあまり活用されないのですが、今回はITC調査が控訴されているタイミングで再発行許可が下りたため、ITC調査が打ち切りになってしまったというケースを紹介します。もし今回のように特許の再発行を行う場合は、ITC調査の申立を行う前にするべきでしょう。

特許を再発行すると元の特許を明け渡すことになる

アメリカの特許に何らかの欠陥があった場合、35 U.S. Code § 251により、再発行(reissue)が行えます。再発行によりクレームも変えられるため便利である一面、再発行された特許が発行された際に、元の特許を明け渡さないと(surrender)いけません。35 U.S. Code § 252

ITC調査の控訴がされている中で特許が再発行された場合は、どう扱われるのか?

Certain Motorized Self-Balancing Vehicles (Inv. No. 337-TA-1000)において、ITC調査が行われ、2017年5月26日、被告製品はいずれも主張された特許クレームを侵害していないため、337条違反はないとする仮決定(initial determination)が下されました。その後、2017年7月28日、ITC委員会は337条違反を認めず、調査を終了するという最終決定を下します。

このITCの判断を特許権者であるRazor社は連邦巡回区へ上訴しますが、そのタイミングでUSPTOはRazor社の再発行申請に対する許可通知を発行します。

この許可通知を受け、ITC委員会は、(1) 再発行特許が発行されたので、元の特許のオリジナルクレームは放棄される、(2) 再発行クレームはオリジナルのクレームと実質的に同一ではないため、既存のITC調査を行う理由そのものが消滅した、と主張し、連邦巡回控訴に控訴を却下するように求めました。

その後、Razor社は、継続再発行出願(continuation reissue applications)を行い、再発行に関する審査は継続されているので、元の特許のオリジナルクレームは放棄されていないと主張します。

連邦巡回区は、Razor USA LLC v. ITC (No. 2017-2591)において、ITC委員会に特許の再発行によりITC調査を継続するべきか否かを判断するように求めます。

そこでITCは再発行に関わる35 U.S.C. §§ 251 と 252の分析を行い、ITC委員会は最終的に、オリジナル特許のクレームはすべて放棄され、再発行された特許のクレームはいずれもオリジナルのクレームと実質的に同一ではないと判断。

時間的に再発行特許が発行される前に事実関係の証拠調査は終了していたため、再発行された特許をベースにITC調査を行うにはディスカバリーを再開しなければならず、委員会は、訴状の補正を認めるには正当な理由がないという見解から、調査の妥当性がないとし調査を打ち切りました。

参考記事:“Commission Issues Public Version of Opinion in Certain Motorized Self-Balancing Vehicles (337-TA-1000)” by John F. Presper and Elissa L. Sanford. Oblon

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