実質的に同じIPRを2回行い、特許クレーム無効の書面が出されるも、申立人の開示義務違反でPTABにおける決定が白紙にされ、手続きが強制終了するという事件が起こりました。さらにこの問題は、IPRの調査開始判断に関わるため控訴できないと判断されてしまい、無効にできるはずの特許を手続き上のミスで無効にできなかったため、申立人としてはとてももどかしい結果になってしまいました。
判例:Atlanta Gas Light Co. v. Bennett Regul. Guards, Inc., 21-1759
連邦巡回控訴裁(CAFC)は、Atlanta Gas Light Co. Guards, Inc.事件(21-1759)において、管轄権の欠如(lack of jurisdiction)を理由にAtlanta Gasの控訴を棄却しました。
2度のIPRでRPIが問題に
この事件では、Atlanta GasはIPRを申請し、口頭審理を経て、PTABからの最終的な書面決定を待っている状態のときに問題が発生しました。最終書面決定が出される前に、Atlanta Gas社が、35 USC § 312(a)(2)で要求される真の利害関係者(real parties-in-interest。RPI)の中にその親会社を記載しなかったため、PTABはIPR開始決定を取り消し、IPRを終了させました。Atlanta Gas社は、このPTABの判断に対して、再審査を要求したが、PTABによって拒否されました。
最初のIPRが終了した後、Atlanta Gas社は、同じ特許のクレームに対して、実質的に同じ理由で2回目のIPRを申請しました。しかし、この申立てには、RPIにAtlanta Gas社の親会社が含まれていました。
この2回目の申立に対し、PTABはIPRを開始。最終的にクレームを無効とする最終決定書を発行しました。しかし、最終決定の後、権利者のBennet社は、Atlanta Gas社の親会社が関与する企業合併が、PTABには開示されていなかったことを発見し、そのことをPTABに報告しました。このBennet社からの報告を受け、PTABはIPRの最終決定を取り消し、全ての手続きを終了させました。
Atlanta Gas社は、一度は特許クレームの無効を判断したにも関わらず、その判断を無効にし、手続自体を終了させた行為は、PTABの裁量を逸脱するものだと主張し、CAFCに控訴します。
しかし、この控訴を検討したCAFCは、PTABによるIPRの審査開始決定の取り消しの控訴についてはCAFCが管轄権を持たないと結論づけました。その結果、Atlanta Gas社の控訴は管轄外として棄却されました。特に、意見書では、USPTOは特定の決定を組織内で再度考慮する権限を持っており、審査開始決定については、35 U.S.C. § 314(d)に基づき、このような控訴手続は不適切であると判断したと述べています。
また、多数派は、今回のPTABの決定は、通常管轄権を有する制裁決定ではなく、§314(d)の不服申し立て禁止により、その不服申し立ては審査管轄外であることが明らかである、と判断しました。
参考文献:Appeal of IPR Termination Dismissed by Split Federal Circuit Panel