CAFCがIPRにおける文献に依存しない自明性主張を退ける

特許を無効化させるためによく使われるIPRですが、無効理由の主張には先行文献のみが活用できます。文献が伴なわない(たとえば、専門家の報告書を参照した)主張は、認められないので、注意が必要です。

3M Company v. Evergreen Adhesives, Inc., No.2020-1738 (June 25, 2021)において、米連邦巡回控訴裁判所(以下、CAFC)は、3Mの再審請求を却下したPTABの決定を支持し、特許の2つの請求項に関する3Mの自明性の主張の拒絶を支持しました。

基礎となる当事者間レビュー(IPR2018-00576)において、3M社は、エアゾールベースの接着剤に関するエバーグリーン社の’056特許に異議を唱えました。3M社は、請求項3および4に関する自明性に基づく主張で敗訴した後、これら2つの請求項に関して再審理請求を行いました。しかし、PTABは、これは、IPRで認められている先行文献をベースにした主張ではなく、3Mが申立書で専門家の報告書を参照して言及しただけの論点をベーズに主張した内容だったので、この請求を却下しました。

CAFCはこのPTABの判断に同意し、PTABが3Mの再審請求を却下したことは裁量権を逸脱していないと判断。その結果、CAFCは、3Mの再審請求は、専門家の声明を引用することで議論を導入しようとするものであり、参照による議論の取り込みを禁止するPTABの規則(37 C.F.R. § 42.6(a)(3))を回避しているというPTABの判断を支持しました。

参考文献:Federal Circuit Says No to Incorporating Argument by Reference

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