故意侵害による三倍賠償と無効化された特許の関係性

ビデオゲームのコントローラーに関する特許侵害訴訟で、原告Ironburg 社は、被告 Valve社の故意侵害判決を勝ち取りますが、35 U.S.C. § 284基づく三倍賠償が認められませんでした。三倍賠償が認められなかった背景には、無効化された特許クレームとの関係性があります。

ケース:Ironburg Inventions Ltd. v. Valve Corp., C17-1182 TSZ at *1 (W.D. Wash. May 26, 2021).

この訴訟において、陪審員はValve社がIronburg社の米国特許第8,641,525号(’525特許)のクレーム2、4、7、9、11および18を故意に侵害したと認定し、Ironburg社に400万ドルの損害賠償を命じました。

故意侵害が認められたので、原告Ironburg 社は三倍賠償を求めましたが、却下されます。地裁の判事は、’525特許のクレーム1がPTABによって無効化されている(クレーム2、4、7、9、11および18の侵害が認められた)ことと、Valve社のコントローラが侵害しているとされる機能は’525特許によって保護されていないことに注目し、Ironburg社は「無効になったクレーム1の侵害を、525特許の他の従属クレームの侵害に関する『懲罰的』な三倍賠償の根拠とすることは認められない」と判断しました。

また、三倍賠償が認められなかった背景には、被告Valve社の主席設計者が初めて525特許を目にしたのは、Valve社のSteamコントローラの商用版や複数のプロトタイプの開発からかなり時間が経過した後であったという宣誓証言も考慮されたようです。

実務上の注意点としては、故意性の認定が得られたからといって、必ずしも三倍賠償が生じるものではないということ、そして、無効化されたクレームが従属クレームの侵害による三倍賠償をサポートする要素にはならないことがあげられます。

参考記事:District Court Highlights Prior PTAB Invalidation

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

screaming child
特許出願
野口 剛史

意図しない公開を避けるためのヒント(どのようなものが「公開」なのか?)

一般公開は特許の権利化を妨げる大きな要因の1つです。一般公開のリスクをなくすには、特許出願の前にクレームされる発明に関する内容を第三者と話さなければいいのですが、そのような方法は現実的でない場合も多くあります。どのようなものが「公開」として扱われるのか、裁判所が一般公開を審議する際にどのような点に注目するのかを知れば、必然と出願前の発明をどのように扱えばいいのか見えてきます。

Read More »