「up to at least 150 volts」はどう解釈されるべきか?

「up to at least 150 volts」とはどういう意味ですか?150ボルトは「~まで」という言葉の使用による最大電圧か、「少なくとも」という言葉の使用による最小電圧か、悩ましい表記です。今回は、このような曖昧な表現の解釈で審判までいったケースを紹介します。

ケース:Ex parte Bagehorn(Appeal 2020-004760)

請求項1は、控訴された唯一の独立請求項であり、金属基板の電解研磨のための方法を対象としていました。クレームされた方法は、「270から315ボルトの電圧で電流を流す」というステップを含んでいました。

審査官は、先行技術文献を2つ考慮して、請求項1は自明なものとして拒絶。クレームの「270〜315ボルト」という電圧について、審査官は、先行技術文献の1つであるClasquinに開示されている「少なくとも150ボルトまで(up to at least 150 volts )の高電圧を使用できることが分かっている」という開示に基づいて、Clasquinは重複する電圧範囲を記載していると考えました。

審査官は、「少なくとも150ボルトまで(up to at least 150 volts )」という表現を「少なくとも150ボルト(at least 150 volts)」の範囲を教示していると解釈し、支持体としての「ニッケル基合金718」について、「少なくとも225,000A/m2という高い電流密度が150ボルト以上の電圧で使用できる」という開示を指摘しました。

しかし、控訴人は、審査官のこのフレーズの解釈は、審査官が「~まで(up to)」という先行する言葉を無視し、Clasquin全体の文脈で読むことができなかったことを示していると主張。特に、控訴人は、「少なくとも150ボルトまで(up to at least 150 volts)」という言葉は、150Vの上限を暗示しているが、「少なくとも(at least)」という言葉は、その上限にいくらかの柔軟性を与えているので、Clasquin文献は、150Vよりわずかに高いが、クレーム1に記載されている270Vの下限には及ばない最大電圧を示唆していると主張。控訴人はさらに、多くの実施例が開示されている表では、最大電圧が150Vであることを指摘。(つまり、クレームされている下限の270Vよりもかなり低い値である)

審判では、控訴人の主張が支持されました。

審査会では、審査官の解釈は、「~まで」という言葉を十分に考慮していないことに同意。「~まで」という言葉は、その平易な意味から、最小ではなく最大であることを示唆していると解釈。したがって、審査会は、文脈上、「少なくとも」という言葉は、直前の「~まで」という言葉を完全に否定するものではなく、むしろ「~まで」という言葉が示す上限が150Vよりも幾分高い可能性を示唆するものであるとしました。審査会は、この解釈がClasquin文献の表に開示されている例に裏付けられており、またClasquinの他の開示内容と一致していることにも注目しました。

そのため、審査官は、当業者がClasquin文献をクレーム1の電圧と同じくらい高い電圧を開示、または示唆しているということを立証できなかったため、審査官の自明性拒絶を覆しました。

今回のポイントは、ときに用語の解釈の仕方によっては意味が全く違うものになってしまうというものです。よくクレーム用語で解釈の違いが問題になりますが、今回のように引用された文献の文言でも同じです。大切なのは、開示内容全体と照らし合わせて内容が一致する解釈をするということでしょう。また、明細書を書くときは、「少なくとも150ボルトまで(up to at least 150 volts )」というようなややこしい表現は避け、その代わりに、 “up to around 150 volts “などの表現を使うことを心がけましょう。

参考記事:Maximum or Minimum?

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