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先行技術で材料と作り方が開示されていれば製造品は予測可能

CAFCは、開示された先行技術の製剤およびプロセスが争点となっているクレーム制限を必ず満たしている場合 (つまり先行文献で開示された内容のみでクレーム制限が満たせる場合)、異議申立されたクレームは予期されたものであり、無効であることを確認しました。特に今回の判例のように、材料と作り方に関してそれぞれ有限の開示が先行技術文献で行われている場合、その組み合わせでできる製造品は先行技術文献で明記されていなくても予測可能とされ、特許性なしとみなされる可能性が高いです。

判例:Arbutus Biopharma Corp. v. ModernaTx, Inc., Case No. 20-1183 (Fed. Cir. April 11, 2023) (Reyna, Schall, Chen, JJ.)

特徴が先行文献に明示されていない場合の特許性判断

Arbutus Biopharmaは、2010年6月30日に出願された仮出願の優先権を主張する2015年3月9日に出願された特許を所有しています。請求される発明は、遺伝子発現のダウンレギュレーションを促進するために細胞への核酸の侵入効率を高めるように機能する非ラメラ構造を有する安定核酸-脂質粒子(SNALP)製剤を提供します。SNALP製剤の非ラメラ構造は、SNALP製剤に組み込まれる脂質とSNALPを形成するためのプロセスという2つの要因に依存することが知られていました。この特許は、使用できる様々な組成の5つのSNALP製剤を開示し、SNALP製剤の製造に使用できる2つの方法:直接希釈法(DDM)および段階希釈法(SDM)を記載した2つの米国特許公報を参照として組み込んでいました(incorporated by reference)。代表的な独立請求項は、SNALPの組成物を記載しており、複数のSNALP粒子の各粒子は、核酸および様々な脂質タイプを含んでいます。また、この請求項は、複数の粒子中の少なくとも95%の粒子が非ラメラの形態を有することを要求しています(形態制限、Morphology Limitation)。

Modernaは、Arbutus特許のすべての請求項が先行技術特許によって予期されていることを主張し、当事者間審査(IPR)を申し立てました。特許審判委員会(PTAB)は、形態の制限は先行技術に明示的に見出されなかったものの、請求項は先取りされていると判断しました。PTABは、形態制限は先行技術の開示に固有の特性(または自然な結果)であると判断。控訴審において、Arbutus社は、形態制限を含む多くの異議申立クレームについて、PTABの認定に異議を唱えました。

追加要件があるかが鍵になる

限定が先行技術の明示的な開示から生じる自然な結果である場合、限定は固有のもの(inherent)です。言い換えれば、制限は、その制限が発明に必然的に存在する特性であり、実際にはクレームによって課された追加要件ではない場合、制限は固有のもの(inherent)ということになります。

IPR手続において、Modernaは、当業者であれば、特許で開示された5つの製剤を用い、DDM法(参考文献に含まれる開示)を用いて製剤を調製すれば、この制限を満たす製剤が必ず得られるので、形態制限は内在する固有のものと主張しました。

異議申立特許と先行技術の両方が、SNALP製剤を得るために使用することができる5つの製剤を開示しています。これらの特許に開示された製剤間の相違は、形態制限に影響を与えないことを示す証拠だけでした。そのため、CAFCは、異議申立特許と先行技術に開示された製剤が同一または本質的に同一であるとの認定を実質的な証拠が裏付けていると判断しました。

CAFCはさらに、異議申立特許と先行技術の両方がDDM法に言及し、DDM法の実施方法を詳述した刊行物を参照として組み込んでいると説明しました。CAFCは、組み込まれた参照文献は、あたかもそこに明示的に含まれているかのように、実質的にホスト文書の一部となるため、組み込まれた出版物の開示が関連すると認識しました。したがって、裁判所は、この限られた数のツール、すなわち、5つの処方とDDM法を使用することにより、形態制限を満たすSNALP処方が必ず得られることを示す相当な証拠があると判断しました。

したがって、CAFCは、これらの開示に従った当業者であれば、形態制限を本質的に満たすことができると結論づけました。

参考記事:If Prior Art Discloses Ingredients and How to Mix Them, the “Cake” Is Anticipated

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