国際特許出願の審査期間を早めるかもしれない共同検索試験プログラムが拡大

2022年3月29日、USPTOは連邦官報に公告し、拡大共同検索試験(Expanded CSP: Collaborative Search Pilot)プログラムへの参加を容易にすることを発表しました。具体的には、USPTOはカウンターパートである日本特許庁(JPO)および韓国知的財産庁(KIPO)と協力し、両パートナーIPオフィスへの個別の請願書(petition)ではなく、どちらか一方のパートナー特許庁のみに提出する必要のある統合請願書(combined petition)を作成しました。拡大されたCSPの恩恵を受けようとする出願人は、USPTO、KIPOおよびJPOのいずれかまたは両方に未審査の対応する出願があることが必要です。

拡大共同検索試験(Expanded CSP: Collaborative Search Pilot)プログラムの目的

拡大されたCSPは、国際的な特許出願を相互出願する出願人に、審査プロセスの早い段階で複数の官庁からの調査結果を提供します。これは、ファーストオフィスアクションを発行する前に、USPTOと日本特許庁または韓国知的財産庁の審査官の調査専門知識を組み合わせることにより、審査を加速し、より包括的な先行技術を出願人に提供することを目的としています。

利点は以下の通りです:

  • 各庁の審査がより一貫したものとなり、知的財産権の確実性が増す
  • 出願が順番に処理されるため、ファーストアクションを迅速に行うことができる
  • 複合的な調査専門知識により、より包括的な先行技術を提供できる
  • 共同審査により、審査完了までのオフィスアクションが少なくなる(平均値、非CSP出願と比較して)
  • 出願のための請願書の提出は無料

このプログラムの他の側面は、ほとんど変更されていません。例えば、パイロットプログラムに参加するためには、USPTO出願人は、これまで通り、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 出願は、3つ以下の独立クレームおよび20以下の総クレームを含み、複数従属クレーム(multiple dependent claims)を含んではならない
  2. Expanded CSPへの参加申請に関する決定の郵送または通知後、申請時に支払った調査手数料および超過クレーム手数料の払い戻しを申請しないこと
  3. 出願人は、国内官庁がクレームが単一の発明を対象としていないと判断した場合、トラバース(明示的または推定的)なし(without traverse)で選択すること
  4. 対応する出願が英語で公開されていない場合、出願人は対応するすべてのクレームの翻訳文を提供すること(これは機械翻訳で十分とのこと)
  5. 出願のすべての提出物は、EFS-Webを介して提出されなければならない
  6. クレーム対応表が必要で、最低限、米国出願に存在するすべての独立クレームと、指定されたパートナー特許庁に提出された対応する出願の間に「実質的な対応範囲」を確立しなければならない(グローバル特許審査ハイウェイ、別名GPPHを使用する場合と同様の要件)。

これらの要件を満たすことで、審査経過が劇的に早くなる可能性があります。しかし、この特定のパイロットを利用するのが良いかどうかは、戦略に関わり、各案件に依存すると思われるので、プログラムの詳細を確認し、慎重に検討する必要があるでしょう。

参考文献:Expanded Collaborative Search Pilot Program – New Combined Petition Option For Participation

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

再審査
野口 剛史

マルチ従属クレームは代替参照されるクレームごとに個別に検討されるもの

アメリカにおけるマルチ従属クレームは一般的ではありませんが、PTABにおけるIPR2020-01234に関する判決で、複数のクレームに従属するクレームの限定事項は別々に考慮する必要があることが示されました。また、特許庁のVidal長官はこの判決を先例として指定しました。この判決は、35 U.S.C. § 112の第5項の言語を解釈し、代替参照されるクレームを別々に考慮することが、法律の歴史と現在の米国特許商標庁の指導および実務に一致していることを示唆しています。

Read More »
特許出願
野口 剛史

米国特許庁がロシア特許庁との提携を解消

ロシアでは現在、ロシア出願人以外による出願中の特許案件に関する文章でのやり取りや費用の支払いが困難なため、今回の米国特許庁とロシア特許庁の提携の解消そのものがどのような影響を及ぼすかは明確ではありません。しかし、大幅な遅れが生じるのは確実なので、影響を受ける出願人は早め早めの対策を取る必要があるでしょう。

Read More »
未分類
野口 剛史

ネタに困らないウェビナー解説動画

これまで知財系ブログ、ニュースレター、ウェビナーなどどれもコンテンツの元となるネタが大切なビジネスアイデアを提案してきましたが、今回はネタに困らないウェビナー解説動画の紹介します。考え方は簡単で、自分でオリジナルコンテンツを作れないなら、他人のコンテンツを使ってしまおうというアプローチです。

Read More »