独占ライセンシーが特許のクレームを補正するには、そのような権利が特許権者から与えられていることを示す必要があります。ライセンス契約の文言によっては、十分な権利が独占ライセンシーに与えられていないと見なされる場合もあるので、可能であれば特許の買取を行い、独占ライセンスしかできないのであれば、特許権者から与えられる権利を細かく網羅的に示す契約を結ぶべきでしょう。
判例:Pediatric Hair Solutions Corp. v. University of Utah Research Foundation, Case IPR2019-01230, Paper 37 (PTAB September 10, 2020). Before: Horner, New, and DeFranco.
独占ライセンシーもIPRに参加できる
特許権者を相手にIPRの申立が行われ、手続きが開始(Institute)されました。しかしその後、特許権者ではなく、独占ライセンシー(exclusive licensee)がクレーム補正の申立を行います。この独占ライセンシーによるクレーム補正の申立に対し、申立人は反対意見を示します。
今回のIPRでは、独占ライセンシーは対象となった特許の「すべての実質的な権利」(“all substantial rights” )を持つとして、実際の利害関係者(real party-in-interest)の1人として扱われ、IPRに参加することができました。
クレーム補正には「特許を補正する権利」が必要
しかし、IPRに参加できるからといって、独占ライセンシーがなんでもできるということでは無いようです。今回のクレーム補正に関する申し立てでは、審査会は独占ライセンシーが特許を補正する権利を付与されたことを示さなければならないと発言し、特許権者とのライセンス契約書の写しを提出する必要があると警告しました。
このクレーム補正に関する判決が行われた時点では、独占ライセンシーはライセンス契約をPTABに提出しておらず、独占ライセンシーが特許権者から特許を補正する権利を与えられているか、審査会が確認できる状況ではありませんでした。
そのため、審査会が独占ライセンシーによるクレーム補正も申し立てを考慮するにあたり、独占ライセンシーが特許を補正する権利を得ていることを示すか、補正をゆるすような特許の十分な所有権を所持していることを示す必要があることを示しました。
参考記事:“In order to pursue a motion to amend, exclusive licensee needs to produce license establishing that it has power to amend patent” by Louis L. Campbell, Michael R. Rueckheim, Eimeric Reig-Plessis, Vivek V. Krishnan and Sharon Lin. Winston & Strawn LLP